お知らせ

PMIムンバイ支部 PMconclave17 参加報告

2017年12月28日

PMconclave17 “PM In An Era Of Disruption”

 日時 : 2017/11/17(土)、18(日)
 場所 : ホリデイ・イン ムンバイ・インターナショナルエアポート(インド・ムンバイ)
 主催 : PMIムンバイ支部

報告:IRC研究会 坂本健太郎

はじめに

 IRC研究会は今回、2017年度研究会活動の一つとして、インド・ムンバイ支部主催のPMconclave17に参加、交流を深めてきました。
 PMconclaveはムンバイ支部が2005年から年に1回開催している、日本支部のPMIJフォーラムのような位置づけの年間メインイベントです。
 今回のテーマは、“PM In An Era Of Disruption”(破壊の時代のプロジェクトマネジメント)ということで、さまざまな業種・切り口からテーマに沿った議論が行われました。
 IRCからは、杉村理事、スペカル、杉谷両副代表と坂本の4名が参加、講演を行ってきました。

 以下2日にわたってのイベントにおいて、特に印象に残った講演と交流内容について報告します。

第一日目

 1日目は受付で軽い朝食をとりながらの受付・ネットワーキングの後、PMIムンバイ支部会長Bharat Bhagat氏のオープニングの挨拶より始まりました。
 ムンバイ支部は2017年度のChapter of the yearに選ばれたということで、そのアメリカ・シカゴでの授賞式の様子が誇らしげに紹介されました。

 イベントは主に一つのセッションがおよそ45分の短い時間で、非常に数多くのセッションが次々に行われる形態でした。
 1日目の講演の中ではまず、Harshita Gupta氏による“ONE MOONSHOT at a time” と題した、Google lunar X prize(https://lunar.xprize.org/)という月面上陸コンテストへの、TEAM INDUSの挑戦の軌跡についての講演でした。このプロジェクトには日本のTeam HAKUTO(白兎)も協同で参加(11月12日に開催された PMI Japan Festa2017ではTeam HAKUTOのCEOが講演)しており、以前NHKでも紹介されていたので興味深く聞きました。 正直なところプロジェクトの宣伝的な要素が強く、あまりテクニカルな内容や具体的な問題解決などは紹介されずちょっと残念でしたが、組織がフラットで、若手が自由に発想・意見を言える空気があり、それを年長者・経験者が下支えする形となっている、という話がいかにも学術的な組織らしく興味深く感じました。

 Devesh Rajadhyax氏からは”Project Management -Powered by AI”というタイトルの講演がおこなわれました。 「AIとML(マシンラーニング)はプロジェクト・マネジャーに取って代わるか?」との問いかけに対し「YesでありNoである」という見解がなされ、その意図として、従来のスコープ・スケジュール・コスト管理のような仕事だけであれば大幅にAIが取って代わる割合が増えるだろうが、リーダーシップやステークホルダーマネージメントのような、より高度なプロジェクト・マネジャーの仕事は簡単にAIで代行されるものではない、さらに、テクノロジーは人間の社会に幸せをもたらすよう注意深く使われなくてはならず、人々の労働を奪うものではなく、よりフェアで効率的かつ安全な環境をもたらすよう活用されるべきである、という内容でした。

 後の一番目では、我々が“Maintaining Continuity in Disruptions”というタイトルで講演を行いました。 前半のメイン部分を杉村理事から、後半を坂本から発表しました。
 内容は東日本大震災の津波というDisruption(破壊・崩壊)に対して日本がどのように対応したか、原発事故に端を発するエナジーシフト、またこのたびインドでの建設導入が調印された新幹線を例に挙げての耐災害性・運用継続性などを前半で紹介、後半では日本支部組織と日本支部による復興支援活動の紹介を行いました。
 約40分のプレゼンテーションのあと、さまざまな質問が寄せられ活発な議論が行われました。

 う少し実業務的な内容としては、Slam Khan氏による“PM on Medical Device Development”で、医療機器向けソフトウェア開発についての紹介がありました。
 インドの医療機器承認に当たっての審査基準や各種法規、それを効率的にクリアしてゆくためのデザインコントロール手法などが説明されました。 アジャイル的な手法も積極的に取り入れられている、との説明でしたが業界の性質上(スコープが厳格で簡単に変えられない)、やはり一般的なソフトウェア開発よりはウォーターフォール寄りの開発フローであると感じました。

 のほかPrashant Mali氏からは“Key Points of Cybersecurity & Law while handling disrupting projects”という題で、ある意味日本でも一般的なトピックの講演が行われました。
 この方はセキュリティのアドボケーター(啓蒙者)として人気の多忙な人らしく、非常に場慣れして説得力のある話で、一切プレゼン資料を使わない自信たっぷりの講演でした。(聴衆も非常に多く熱心だった)
 おもしろかったのは、前半ではdata theftやdata leakageなど外部からの脅威についての議論、後半はCopyrightやそのほかのIT actなど最近の法規制の動向、つまり自分たちが犯罪者にならないための心得について語られていたことで、日本人の私の感覚だとそれぞれ別のジャンルの話のように感じたのですが、生き馬の目を抜くインドのベンチャー起業家(今回そのような人の講演も多かった)からしてみれば、Cybersecurityの世界でさまざまなリスクを排除して生き残ってゆく、という意味では一貫した実用的な切り口だったのかな、とも思いました。

 1日目の夜はムンバイ支部の皆さんと交流会を開きました。
 会長のBharat Bhagat氏をはじめメンバーの方々から暖かく歓迎していただき、ムンバイ支部の活動状況やメンバーの構成、関心事などについてお話いただきました。 ムンバイ支部は1989年創立、世界でも稀有な例として自前の事務所を所有(ムンバイは非常に不動産が高いそうです)し、月に一度のミーティングを開いて活動しているとのことでした。
 設立当初からの熱心な方が多く、メンバーの定着率が高いこと、地に足の着いた活動で着実に実績を積んできた様子が伺われました。
 かねて日本に高い関心を持っていること、ぜひ定期的に今回のような交流の場を持ってゆきたいことなど、相互交流を今後も継続してゆくことで合意しました。

第二日目

 2日目は、1日目と同様に受付で軽食を取りながらのネットワーキングのほか、希望者は会場でヨガ教室が開かれ、その後9:00よりセッションが開始されました。

 まずAnuja Agarwal博士による“Technology Management in the Era of Disruption”という初日のDevesh Rajadhyax氏の講演のテーマに近い内容の講演が行われましたが、こちらはより未来学的というか観念的な印象が強いものでした。
 2~30年後、AIが人間の英知を越えたタイミング-シンギュラリティ-を迎えるタイミングをTechnology Havoc(技術による大混乱・大破壊)であると位置づけ、そのような中で教育・法律をはじめとしたレギュレーション・技術革新の3つの分野で、”Human First”、”Be Human Centered”と、人間中心主義で立ち向かってゆくべきであるという議論でした。
 「技術による人間の排除」というのは日本でも珍しくない議論ですが、日本に比べ単純労働に従事する人口が多いインドでは技術革新による就労率の悪化とそれによる社会不安は、より切迫した直接的な問題と捉えられているようでした。

 のほかにVV Lakshminarayana氏による”Disruption in Serving Society”という講演がありました。
 この人はDirector General of Police, Mumbaiという警察の要職(警察署長?)に就いている方で、警察という立場からのDisruptionに立ち向かう考えについての講演でした。
 彼によれば、Disruptionは現代さまざまな階層(家族・社会・教育システム・宗教)でこれまで想像し得なかった形で起きうるもので、時によってBlack Swan(めったにおきないが起きた場合は非常な影響をともなうもの)である、”’Come what may’ is the antidote for disruption”(「いつか来るものは必ず来る」と考えることこそDisruptionに対する心構えである)ということを述べられていました。
 内容は正攻法で奇をてらったものではありませんでしたが、エリートらしい普遍的な考えに基づいたもので、我々の災害復興に対する講演にも通じる分かりやすい内容でした。

 た、Alcido Coelho氏による”Project Management in a VUCA World”という講演も興味深く聞きました。
 昼食時にも向こうから挨拶して気さくに会話してくれる人で、ハーバードビジネススクールを卒業後、現在はTATAグループの住宅開発事業を率いているとのことでした。
 VUCAとはVolatile(気まぐれ)、Uncertain(不確実)、Complex(複雑)、Ambiguous(あいまい)といった今の世の中の複雑性と不確かな状態を表した言葉ですが、講演の中ではこれをVision & Value、Understanding、Clarity、Agilityと置き換えDisruptionを乗り越える、Mobility、Social、Cloud、Big Dataが今後数年の間世の中を支配する、などの議論を行い、その活用の一つBIM(Building Information Modeling)の例として5D Construction Modelという高層ビル建設のコンピューターモデリング+建設プロジェクトマネジメントを組み合わせた技術の紹介を行うなど、盛りだくさんの内容でした。
 非常に理知的で整然とした内容でしたが、もし自分が建設業界に詳しければより得るものがあったのだろうとやや悔しくも感じました。

 後にGauranga Prabhu氏による”Govardhan Eco Village – a dream project”という、これまでとは異なった毛色の講演が行われました。 Govardhan Eco Village(http://ecovillage.org.in/)というのは古代の失われた寺を再現して造られた施設での、いわばエコロジーの体験道場というかテーマパークのようなところで、観光客がここに住んで、自然に寄り添った環境にやさしい生活を体験させる場とのことです。 非常に徹底しており、菜食主義は当たり前、家畜の糞を燃料にしたり日干し煉瓦にしたりと、かなり本格的な自然主義者でないとついていけないように感じましたが、欧米の旅行者にも人気を博して成功しているようで、国連をはじめとした多くの国際機関からもその活動に対して表彰を受けているそうです。 氏は僧籍にあり、プロジェクト自体も仏教活動の一つであるようでした。 ビジネスやテクノロジー革新などのトピックが多かった今回のイベントの中で、環境問題や自然保護を主軸に扱ったユニークな講演だったためとても印象に残りました。

 ロージングセッションでは、イベントに協力した人たちへの表彰や来年度開催に関するアナウンスの後、Bharat Bhagat会長の締めの挨拶で終了しました。

 イベント終了後、インドのITビジネスの手法・事情について生の声を聞く、ということでムンバイ支部のAhmed Ashfaq氏に個別インタビューの機会をいただきました。
 氏はカナダ航空の運行管理システムについてIBMのオフショア開発・保守チームを立ち上げから経験した方で、遠隔地とのコミュニケーションをはじめとした技術革新によるプロジェクト運営の変遷について興味深く拝聴しました。 (メインフレームベースのシステムで、今でもアセンブラ(!)でのメンテナンスがあるそうで、技術者の維持も大変とのことでした。)

感想

 Disruptionとは、辞書で引くと「破壊」や「崩壊」などとなっており、自分としては直接的にネガティブな言葉と理解していましたが、今回のイベントでは既存ビジネスの破壊をもたらす技術革新と新たなビジネスの創造のチャンス、とポジティブに捉えられている例が多いように思われました。
 法規制、環境基準などに気を配る一方、
UBERTeslaBitcoinなどのように新たなビジネスのチャンスを貪欲に自分たちのものにしようというバイタリティが強く感じられました。
 日本と比べて社会格差や貧困、治安、環境汚染など課題も少なくないように思いましたが、それらに対する切迫感よりはどちらかというと変わりゆく世の中に前向きで楽天的な空気を強く感じました。

おわりに

 今回、当方にとっては初めてのインド訪問であり、イベントに2日そのほか1日の計3日という限られた時間ではありましたが、長い歴史と豊かな文化に基づいた非常にエネルギッシュな力強い国であり人々であるという印象を持ちました。
 まだまだ聞きたいこと、知りたいことが多くあり、とても向こうの文化・社会に触れたとは思えず、個人的にもぜひ交流を続けて近いうちに再度訪問したいと強く感じています。

 IRCとしてムンバイ支部と交流を深めてゆく中で、IRCメンバーだけでなく日本支部の皆さんにも広く興味をもっていただけるような企画を今後も実施して行きたいと思います。

 

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①日本支部講演の様子

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②杉村理事によるプレゼンテーション

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③講演後記念撮影

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④講演後表彰式

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⑤右から、IRC坂本、杉谷副代表、
スペカル=ラジーフ副代表、一人おいて杉村理事

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⑥ムンバイ支部Bharat Bhagat会長
と杉村理事

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⑦二日目会場の様子

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⑧ムンバイ支部の皆さん

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⑨ムンバイ支部との懇親会の様子