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【第5回】 私の振り返りと現在

PMI日本支部 事務局長  田坂 真一

 

皆さん、ITの開発プロジェクトを担当して、胃が痛くなったり精神的にブルーになったりしたことはありませんか?

私はビジネス・エリアのプロジェクトに関わった時に何度もあります。 とにかく、プロジェクトを受注したお客さまの方向を向くと途端に胃がよじれてきました。 全てのプロジェクトで同様な状態になったということではありませんが、ただ特定のプロジェクトではそのようなシビアな目に遭ったことは間違いありません。

最初から暗い話で申し訳ありませんが、これを経験しないプロジェクト・マネジャーを探すのは難しいかもしれないなと個人的には思っています。 当時はまだPMBOK®の初版(B5版)を勉強したてで、自分の経験と混在した形で実務での適用を試行中の時代でした。それ以降、第5版まで内容の改善や充実を含め改訂がなされてきているのは、よくご存じだと思います。

今思うと、まだまだプロジェクト・マネジャーとして知識や実務経験、日々の修行が全く足りなかったのでしょう。PMBOK®から得られる知識と実務での適用経験の両輪がうまくかみ合わないと、私のようにシビアなプロジェクト運営を経験することになると証明したようなものです。このような経験に会ったこともなく、これまでプロジェクトをしっかりこなして来られた方は確かにいらっしゃるでしょう。大変素晴らしいことだと思いますが、ただ何名いらっしゃるでしょう?

さて、私とプロジェクトとの関わりはシステムエンジニアとして、とある自動車会社の3次元CAD/CAMの自社開発を請け負うプロジェクト・メンバーから始まりました。

そうです、いわゆる汎用機上でCOBOLでなくFORTRANやPL/I、アセンブラーで組む技術計算です。マトリックス計算など含め三角関数などを駆使してロジックを組み上げたり、自動車のボディー形状を数学モデルで表現するベジエ・パッチやクーンズ・パッチなどを使ったりして、当時1台1,500万円のグラフィック・ディスプレー上に表現し、設計者が対話式に設計活動を行うアプリケーションです。設計した結果が設計者にリアルタイムに形状として見え、対話しながら作り上げていくという、その当時はそれで大変進んでいたもので、米国のビッグ・スリーに追いつけ追い越せと、開発プロジェクトそのものが大変生き生きとしていたのを思い出します。

そう言う意味で、同年代の、お客さまの若手新進気鋭のエンジニアと一緒に作り上げる環境であったこともあり、ステークホルダー・マネジメントやコミュニケーション・マネジメントなど含め、全てで苦労した覚えがありませんでした(まだ、PMBOK®は日本に導入される前でした)。
それから15年ほど、CAE、CRAY全盛のスーパーコンピューティング・アプリケーション(衝突解析、非線形熱流動解析、塑性加工、例えば自動車のボディーを打ち出す金型設計)の利用技術の開拓や移植、実業務への適用評価など技術畑で過ごしました。海外の研究機関や自動車メーカーとの情報交換などでよく海外出張させてもらえた時期でした。 今思えば大変懐かしくかつ楽しい時期で、私にとってまさにやる事、成す事すべてうまく行った最初で最後の時代だったと言えます。

しかしその後、データベースを中心に据えたオンラインやバッチ処理系のビジネス領域を対象とするプロジェクトへ自身のレパートリーを広げて行くことになりました(社命により広げざるを得なかった)。私の専門分野でないこともあり、種々の困難な状況に出くわしました(会社を定年退職するまでこの領域のPMのまま、エンジニアリング領域には戻れず)。最初の暗い状況はこの時から起こりました。その状況の中で初めて、PMBOK®にまとめられた9つの知識エリア(第4版ベース)をマスターし、実践で適用することの重要性を認識しました。人間やはり痛い目に遭わないと体得できない典型例でしょうか。

今現在は、PMIが推進する、プロジェクトマネジメントの日本における啓発活動が仕事ですが、PMBOK®には、「私にプロジェクトマネジメントの重要性をよくぞ気づかせてくれた」と大変感謝しています。 PMBOK®は世界中のPMのベストまたはグッド・プラクティスを標準に落とし込んだ、プロジェクトを進める上のPMのためのお作法、いやバイブルとも言えますが、それを裏付けるものとして、累計で400万部に届こうかというほどグローバルに展開されてきていることを見れば明らかです。今や世界で52万人を超えるPMP®資格者がプロジェクトマネジメントを実践することで社会に貢献し、日々仲間が増えているのもうなずけます。 世界中の多くのプロフェッショナル仲間が同じ標準に基づいて、国境を超え活躍しているのは、頼もしくもあり、また大変心強いことです。

PMBOK®やプログラムマネジメント(PgMP)標準、ポートフォリオマネジメント(PFM)標準は本年1月に4年ごとの改訂を受けて進化し続けています。組織的プロジェクトマネジメント成熟度モデル(OPM3®)も近々改訂されるでしょう。 われわれも、PMIの動向に合わせて世界のプロフェッショナル仲間と一緒に進化し続けて行き、プロジェクトマネジメントを通して社会に一層貢献できればうれしいですね。 併せて、家族、同窓生や仲間たちにも担当しているプロジェクトマネジメントを誇らしく紹介できればベストです。

お互い頑張りましょう、自分のため、家族のため、日本社会のため、世界のために!

 

以上