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【第6回】 プロジェクトのウソを見抜く

プロジェクトのウソを見抜く
~イノベーティブな製品・サービス開発のプロジェクトマネジメント~

PMI日本支部 アジャイルPM研究会 準備プロジェクト代表  中谷 公巳

 

 

プロジェクト・マネジャーたちは、新製品やサービス開発のプロジェクトで、公式にヒアリングするにせよ、口伝えで情報を得るにせよ、その過程でウソに騙されないよう対処する必要があります。各々の立場から発言する本人は正しいと信じていても、実際には真実ではないことが多いようです。

例1 見込み客が言う、「こんな商品やサービスがあったらいいな」

新しい商品やサービスの開発に取り組んでいるプロジェクトでは、これまでの試行錯誤の結果やできあがったサービスを見込み客に評価してもらい、軌道修正の必要性があるかを問うことがよくあります。でも、意見を取り入れ、軌道修正を行った後の彼らの行動は、言っていることと全く違う場合があります。斬新でクリエイティブなアイデアを取り入れる場合は、なおさらです。

本当に「こんな商品やサービスがあったらいいな」などと思っているのでしょうか?

その本気度を測るためには、言葉よりも行動にこそ注目すべきです。「こんな商品やサービスがあったら……」と言っていることはいったん無視して、彼らの普段の行動にこそ目を向けるべきです。現在、問題を解決するのにお金や時間を費やしていないのであれば、今後もそうしない可能性があります。ならば、商品やサービスを作るのではなく、それに代えて、アイデアを取り入れた試作品・試作サービスを提供して報酬を得る方法を考えた方が良いかもしれません。

例2 開発担当者が言う、「計画通りにリリースできると思いますよ」 

製品開発担当者は納期通りに開発を終えようと決意し、宣言しますが、何事も常に当初の見込みよりも時間がかかり、コストもかかります。たとえ以前にその仕事をした経験があったとしても、仕事を遂行するのに必要な時間あるいは金額を推定する際、人間は楽観的にとらえようとする傾向があります。

解決策の1つは開発のパラダイムを変えることです。1つの長い開発サイクルを回すのではなく、アジャイルなプロセスを取り入れ、多くのサイクルを短期間で回すようにすることです。新製品の発売にあたって、最初からすべてを盛り込もうとはせずに、「必要最低限の機能を備えた製品」から始めるべきです。

すべての機能を盛り込んだ製品を当初の計画通りにリリースするよりも、実際の市場でテストするのに十分な程度であれば良いという割り切りが必要です。

例3 営業担当者が言う、「もちろん、この商品は売れますよ」

営業部隊が、新たな製品の市場投入に向け、大きな売り上げを予測したとしても、売り上げが伸びるとは限りません。 需要がなかったのだろうかと、製品開発当初に立てた大前提を疑う視点も必要ですが、必ずしもそうとは限らず、営業部隊が、電話営業や訪問営業を全く行っていないということもあります。営業現場では売り上げが小さなものよりも大きなものを優先していたり、あるいは、既存の販売チャネルを活用して新製品を売り込むという考えをしていたりすることが、一般的なように思えます。未知の顧客に対して、販売チャネルをゼロから築き上げるのは大変だからです。

「もちろん、この商品は売れますよ」と口では言っても、人は誰しも自分にとって意味のないことはしません。試験販売をしっかり管理し、実際に販売チャネルで何が起こるかを観察します。また、売り上げの数字だけを見るのではなく、電話営業や訪問営業の回数、新製品が売り込まれる頻度などのプロセスをチェックする視点が欠かせません。

例4 経営陣が言う、「君の裁量で進めるといい」

「戦略は選択すること」と言われますが、イノベーションについて考えるとき、経営陣はこの教訓をしばしば忘れてしまうようです。プロジェクトの初期段階で、何を検討すべきかと求められると、できるだけ多くの選択肢を残しておくのが正解だと考える経営陣が多いのですが、これは役に立たないばかりでなく的確でもありません。逆説的ですが、制約がイノベーションを促進することだってあります。

「君の裁量で進めるといい」と言われたなら、経営陣に、検討の議題を増やしていくのではなく、もっと絞り込むように要求してみること。また、早い段階でアイデアへの予算を要求したり、あるいは全く違った市場セグメントにいる企業との提携を提案してみたりすることです。要求や提案への返答によって、自分にどの程度の権限と行動の自由が与えられているかがわかります。
 

「見込み客のニーズ」、「開発スケジュールの実現可能性」、「営業・販売の見込み」、「経営層、マネジメントに対して自分の行動の自由度を高められるかどうか」を調べる賢明な方法を見つけることが、斬新でクリエイティブなアイデアをかたちにできる、イノベーティブな製品やサービス開発のプロジェクトマネジメントを可能にします。 「プロジェクトのウソを見抜く」ことにより、プロジェクトに求められている成果・課題等の本質が浮かび上がってきます。