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【第13回】 Agile Japan 2013 ~共に創ろう、日本のアジャイル~ 参加レポート

 

今年も1月14日、15日の Regional Scrum Gathering Tokyo 2014 を皮切りに、いろいろなアジャイル開発関連のイベントやセミナーが開催されると思いますが、皆さんにアジャイル開発プロジェクトに興味を持っていただけたらと、私も昨年(2013年)5月24日に参加した Agile Japan 2013 の参加レポートを執筆してみました。 
皆さんもアジャイルのイベントへ参加したり、アジャイルプロジェクトマネジメント研究会に参加したりして、アジャイル開発のプロセスやアジャイルプロジェクトマネジメントの考え方を学んでみませんか?

PMI日本支部 アジャイル・プロジェクトマネジメント研究会 準備プロジェクト  國里 康典 

概要

2009年に第1回が開催されてから、今年で5回目の開催となったAgileJapan。東京箱崎以外の全国のサテライト会場とも連携して、趣向を凝らした構成となっていました。午前の共通セッションと午後の4つのトラックに分かれたセッション構成となっており、イベントとしては早めの9時開始という時間設定だったにも関わらずチュートリアルセッションから多くの人が参加していました。
私自身は実務でのアジャイルを適用したプロジェクト経験がなく、準備プロジェクトで皆さんのお話を伺うばかりですが、このイベントでいろいろ吸収したいと思い参加させていただきました。アジャイルのご経験が豊富な塩田さんの同セミナーレポートが7月にありますので、あわせてご参照ください。

参加したセッション

Agile Japan 2013 ~共に創ろう、日本のアジャイル~
開催日 : 2013年5月24日(金)
会場 : 日本アイ・ビー・エム株式会社 本社セミナールーム
規模 : 参加人数 約200名

1.「チュートリアルセッション」 
 
西河 誠 氏(AVCマルチメディアソフト株式会社) 
  
アジャイルが初めての人のためのモーニングチュートリアルとして、西河氏が登壇され著書の「アジャイル開発の教科書」を発表用にアレンジされたセッションとなりました。アジャイルの定義と導入の意義に始まり、ソフトウエアの価値の本質を考察しアジャイルを現場に導入するためにはどういう考え方を持てば良いのか、具体的な事例をもとに大変分かりやすい内容でした。「顧客の価値を考える」「実践こそがアジャイル」ということが腑に落ちるセッションでした。
  
2."Demand Technical Excellence"アジャイルにおける技術と品質の重要性
 
James Grenning 氏
 
品質に関して特に意識させられたセッションとなりました。ソフトウエアを常に動かし続け品質を作りこんでいくことがどれだけメリットがあることか述べられていました。また、そのためにはマネジャーは最高のチームを育てるようにしなくてはならない、モチベーションは無理に上げるものではなく下げる要因をなくしていくことが重要であるとのことでした。開発者が自身をプロとして認識し、新しいことに挑戦する心を持ち、チームのメンバーを信頼すること、これらのことはとても重要だと感じたセッションでした。
 
3.「柔軟心 (にゅうなんしん) と庭園デザインにおけるユーザーエクスペリエンス」
 
枡野 俊明 氏(建功寺住職・多摩美術大学環境デザイン学科教授)
 
大変印象に残るセッションでした。禅と日本の伝統をベースに創作活動をされており、庭園のデザイナーとしてご活躍されています。庭園の造形は設計書に従って作っていくものではなく創作者の感性が大きく影響し、その光景に触れた人の感動を呼び起こします。これがまさにAgileでいうところの顧客の価値(ユーザー・エクスペリエンス)を考えることにつながっていくのだと思います。古くから日本人が取り組んできた庭園の世界に学ぶべき点があるというのは大きな発見でした。
 
4.「アジャイル開発のプラクティス・レファレンスガイド~アジャイル開発を適切に導入するための工夫と留意点~」
 
山下 博之 氏(独立行政法人情報処理推進機構)
 
IPAとして、アジャイルの現状についての説明がありました。アンケートをベースにした調査では、Agileの適用が増えてきているとのことでした。また、IPAのサイト(http://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/reports/20130319.html)において、ガイドが公開されています。ご参考にされてはいかがでしょうか。
 
5.「大手ベンダーが組織的に取り組むアジャイル開発の普及展開~お客様と共に時代を勝ち抜くための新しい「手札」を増やす~」
  
小原 由紀夫 氏(株式会社富士通アドバンストエンジニアリング)
誉田 直美 氏(日本電気式会社)
新井 広之 氏(株式会社NTTデータ)
Mehra Rohit 氏(株式会社NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパン)
  
ベンダーでの組織的なアジャイルの取り組みについて、3社から紹介がありました。各社ともアジャイルを既存の活動の中に取り込んでいく工夫が見られました。アジャイル導入のプロジェクト現場のモチベーションを上げることに成功しており経験者の8割以上が次もアジャイル開発を望んでいるといった具体的な事例は大きな希望であると同時に、アジャイル開発導入の最大の課題は顧客調整や契約ではなく容易に変化させることのできない組織文化であるという報告もあり、今後乗り越えるべき課題があると感じました。
  
6.「大規模/分散開発におけるアジャイルの適用~IBM のソフトウェア製品開発事例を通して~」

若尾 正樹 氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
江木 典之 氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
  
このセッションでも組織でのアジャイルの取り組み、特に大規模開発においての事例が紹介されました。IBMではさまざまな取り組みを行っていて、そのうちのひとつがアジャイルであるという説明でした。複合的な取り組みでアジャイルそのものも進化させる取り組みだと思います。最終的な製品・サービスのイメージ(ビジョン)を共有することはアジャイルでなくとも重要な要素なのですが、このセッションではそれを強く認識させられました。

全体的な感想

アジャイルの普及が進むにあわせてイベントの内容もどんどん充実してきているそうで、とても活気があり来年も参加したいと思うイベントでした。顧客視点や品質重視という言葉はこれまでずっと言われてきていることであり、それに向けた多くの試みがあったにも関わらず、全体として生じる誤謬を解決する方法のひとつがアジャイルなのだと思います。ただ、バズワードとして用いられている例もあり、アジャイルそのものが洗練されていくと同時に底辺の拡大も行っていかなくてはならないと感じます。その意味においても今後のイベント開催にも期待が膨らみます。