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【第15回】 Regional Scrum Gathering Tokyo 2014 参加レポート

 

今年(2014年)1月14日と15日に秋葉原UDX カンファレンスで、3回目の開催となる Regional Scrum Gathering® Tokyo 2014(以下、SGT2014)が開催されました。今回はアジャイルソフトウエア開発宣言の起草者の一人でもあり、Scrumの原典ともいえる書籍「アジャイルソフトウエア開発スクラム」の著者 Mike Beedle氏が来日し、ソフトウェア開発の枠を超えた、マネジメント手法としてのScrumについての基調講演を行いました。
 
今年のSGT2014ではPMI日本支部からもアジャイル研究会準備プロジェクトが協賛コミュニティとして参加し、15日午後に開催されたアジャイルゲームでテーブル・コーディネータとしてワークショップを開催しました。
本レポートではSGT2014の雰囲気と、基調講演、およびアジャイルプロジェクトマネジメント研究会主催のワークショップの模様をお届けします。
 
PMI日本支部 アジャイル研究会準備プロジェクト
関口 匡稔 、PMP、PMI-ACP、CSPO 

SGT2014の雰囲気

「Gathering」 の名が示すように、Scrumをとりまく様々なコミュニティや実践者が集まり、自分達の手で作り上げるところが、SGT2014の魅力です。イベントページのタイムスケジュール を見ていただけると分かりますが、基調講演、招待講演を除けば、ほとんどのセッションがアジャイル関連コミュニティの発表や、Scrumを実践している企業からの実践者の発表です。予定されたセッションの他にも、飛び入りで(思いついた当日に!)発表できるオープンジャムと呼ばれるセッションもあり、ただセッションを聞くだけではなく、セッションを行う側に立つという楽しみ方もできるようになっています。
 
参加者はScrumの実践者がおよそ半分弱で、年齢層は30代が半分以上だったのではないかと思います。Scrumを実践している中で得たノウハウや課題などについての情報共有や、これからScrumをはじめるため参考情報の収集などを目的として参加している人が多く、まさに実践者の集いとなっていることがうかがえました。

基調講演 Enterprise Scrum: the future of management

Mike Beedle氏による、Enterprise Scrumをテーマにした基調講演です。Mike Beedle氏はJeff Sutherland氏に次いで2番目にScrumを実践し、1995年以降現在まで世界中の企業でScrum / Enterprise Scrumのコーチを務めています。また、自身の会社はScrumで運営しています。最初に、様々なデータを示しつつ、
  •  現代のビジネスは速度が非常に重要になってきていること
  •  利益の大半は申請品から得られる。即ち、イノベーションが企業にとって死活問題になってきていること
  •  新製品の開発効率は企業によって大きく異なり、勝ち組と負け組が明確であること
と現代の複雑なビジネス背景を述べます。高い利益を得るためには、誰よりも素早い企業変革が必要であり、これこそがScrumが使われる原動力になっています。
 
続いて、Scrumの生い立ちとその歴史を紹介し、Standish Groupの CHAOS Manifestoから、アジャイルプロセスがウォーターフォールプロセスを超えて成功したプロセスになっているというデータを示します。そのように成功したScrumを、ソフトウェア開発以外のプロセスに適用することはできないのでしょうか? そのように問いかけながら、Enterprise Scrumの紹介が始まりました。
 
Enterprise Scrumは、Scrumをパラメーター化して、組織のあらゆるレベル、あらゆるプロセスに包括的に適用するものです。その特徴は
  •  ビジネスとの統合
  •  汎用性
  •  スケーリング
だと言います。
 
「ビジネスとの統合」 とは、Scrumのバックログの考え方を組織戦略に応用し、組織戦略バックログとしてまとめ、それを縦割りではなく機能横断のチームで実行していこうというものです。バックログの優先順位には、ブルーオーシャン戦略を用います。
 
「汎用性」 とはScrumを汎用的なパターンとして、あらゆる組織の階層、プロセスに適用できるようにするものです。Scrumの要素(何を届ける価値とするか、見積りの単位、イテレーションの間隔、何が実用可能な改良なのか)をパラメーターとして定義することで、その組織、プロセスに応じたScrumを構成することができるようになります。
 
「スケーリング」 とは、Scrumを小さなチームから、Scrumが集合した大規模なScrumまで、階層的に適用できるということです。一つのチームから、同じ製品、システムを作る複数のチーム、そして組織全体へと、段階的・再帰的にScrumを適用するということです。
 
講演の最後に、2020年までにScrumがマネジメント手法のデファクトスタンダードになるだろうという大胆な予測を行いました。
 
従来の開発手法とアジャイル開発手法の大きな違いは、チームの重視、一丸となることの重視であると思います。「一丸となったチームで素早くリリースを行い、変化に対応していこう。」とのScrumの進め方は、実は、そのまま企業運営にも使えるのでは、と感じさせる基調講演でした。考えてみれば、企業活動とは一定期間で成果を出し、それを永続的に続けていくという性質を持っています。そういった観点からはScrumとの親和性はあり、日本でもScrum的な運営をする企業が増えていくかもしれないなとも感じました。

Agileにかける橋

アジャイルプロジェクトマネジメント研究会では、15日午後のアジャイルゲームのセッション枠を1ついただいて「Agileにかける橋 -PMBOK® 再確認-」と題するワークショップを行いました。
 
本ワークショッップの狙いは、従来型プロジェクトとアジャイルプロジェクトの特徴を参加者自身に考えていただき、その過程で共通の関心事項の存在(知識エリア)と、異なる点を明確にし、どの点について考え方の転換が必要なのかを理解していただくことです。
 
PMBOK® とアジャイル手法は対立するものではなく、ただいくつかの知識エリアの実践において発想を変える必要があるということが本ワークショップのメッセージです。また、発想を変えていく中で Software Extension to PMBOK® Fifth Edition を紹介すれば、Software Extensionが出てきた背景や活用方法がより一層理解できるのではないかと考えました。
 
アジャイルゲームは、基調講演のホールを4分割し、それぞれのコミュニティがワークショップを実施する形式で行われます。参加者は自分が興味のあるワークショップに参加し、途中退出や別ワークショプへの移動も自由です。最近話題のリーンスタートアップや、ビジネスモデルキャンバスのワークショップも開催される中、我々のテーマがどれだけ参加者の興味を引くか、「ひょっとしたら参加者いないかも・・・」と不安でしたが、11人もの方にご参加いただき、活気のあるワークショップになりました。
 
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このワークショップはアジャイル・プロジェクトマジェイメント研究会のイベントキャラバンや読書会などで何回か実施していますが、意外なほど参加者が抱くそれぞれの手法への印象は似通っています。アジャイルをやってみたいと思う人がまず最初に思うのは、従来のやり方との違いがあまりにも大きすぎる(ように見える)ために、どこから手を付けて良いかわからない、もしくは、今までのやり方を捨ててビッグバンで新しいやり方にするしかないのでは?ということだと思います。手法の比較は単純ではありますが、アジャイル実施について多くの示唆を与えてくれます。
 
後述の読書会では、もう一歩踏み込んで、PMBOK® の各プロセス、知識エリアとアジャイル手法の比較について議論しています。 ご興味をもたれた方は、ぜひご参加下さい。

アジャイルプロジェクトマネジメント研究会および読書会のご紹介

* アジャイルプロジェクトマネジメント研究会は、月例定例会(毎月第3木曜日)の他、イベントキャラバンと題し、協賛企業様オフィスにてアジャイルに関するディスカッションを行っています。アジャイルについて研究・議論したい方のご参加お待ちしております。また、普段からFacebookのグループページ(クローズド・グループ)を使用して、情報共有や意見交換を行っています。
 
* 今回のワークショップのコンセプトをお借りした書籍  "The Software Project Manager's Bridge to Agility" の読書会 を毎月、開催しています。英語の書籍ですが、その内容を日本語で紹介した後、参加者でディスカッションやグループワークを行う形式になっています。ご興味のある方はお気軽にご参加ください。 読書会は、現在、研究会メンバー以外の方も参加できるオープンな勉強会として開催しています。
 
 
2014年2月