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【第19回】 良い人生と残念な人生

 

 
女性PMコミュニティー WomenOBF 代表
坂上 慶子
 
 

幸福の定義

皆さんは、「あなたは幸福ですか?」と問われたら、どのように答えるでしょうか?
 
「はい、幸福です」と胸を張って答えることのできる充実した毎日を送っている方もいるでしょうし、「冗談じゃない、不幸の連続だよ」と、どよ~んと落ち込んでしまう方もいらっしゃるかもしれません(悪いこと聞いてしまってごめんなさい)。
 
大概の方は、「不満足なことはいろいろあるけど、高望みしても仕方ないので、おおむね幸福かな」と条件付きのような幸福状態が多いのではないでしょうか。そもそも幸福の定義とはなんでしょうか?
 
私は、幸福の定義を、
 
(1) 現状を正しく認識できること、
(2) 未来への可能性を信じることができること、
(3) あるべき姿を思い描くことができること、
 
の3点に置いてみました。
 
コップに水が半分入っている情景をどのようにとらえますか、というエクササイズはお馴染みですね。「まだ半分水が入っている」ととらえるのか、それとも「もう半分しか水がない」ととらえるのかというアレです。巷に蔓延する怪しい幸福商法などですと、「まだ半分ある」ととらえ、幸福を神に感謝しましょう、このつぼを買うとさらに効果的です・・・などとなるのでしょう(笑)。
 
「まだ半分も」または、「もう半分しか」のいずれでとらえようとも、「半分である」という事実の認知に過ぎません。重要なのは、認知の先にある行動です。
 
「まだ半分もある」と楽天的にとらえ、その上にあぐらをかいて何も対処しないのであれば、そのうち水はなくなってしまいます。逆に、「もう半分しかない」という土壇場の状態から踏ん張って起死回生をはかることもあるでしょう。「もう半分しかない」は、悲観的なあきらめを表すだけとは限らないということです。事実の認知がどうであれ、未来はきっともっと良くなると考え、そこに向かって努力できることが幸福の要素のひとつなのです。
 
3点目は、本来あるべき姿をどこに置くかということです。コップの水が半分あるという状態があるべき姿なのか、それとも満杯になっている状態があるべき姿なのか、はたまたあるべき姿はバケツ100杯分という現状と大きくかけ離れた姿を思い描くのか、いずれかによって、満足感や将来の可能性への信頼感は変わってきます。
 
あるセミナーに参加したとき、幸福について少人数グループで話し合ったことがあります。
 
認知症のご両親を看取って間もないある初老の女性は、「私は幸福です」ときっぱりおっしゃいました。ご両親に対してご自分のやれることはやりきったという満足感があり、それまでの長い人生におけるさまざまな出来事を振り返っても立ち直れないようなひどい出来事は思い浮かばない、幸福な人生だったと。
 
また、起業をめざしている中堅若手の男性は、「どちらかというと幸福じゃない方に針が振れています」と答えました。現状の満足度はあまり高くなく、起業によって現状を打破する望みを抱いてチャンスを狙っているのだが、まだ実現できていない、といったところでしょうか。
 
「あるべき姿」をどこに置くかは、満足度に大きな影響を与えます。あるべき姿を、容易に到達可能な低い位置におくことは可能ですが、その場合、幸福を感じる度合いはあまり上がらないという研究結果が出ています。
 

幸福感を高めるエクササイズ

ここで、幸福感を高めるためのエクササイズ「味わう」をご紹介しましょう。
 
「味わう」は、日常的に起きる良い出来事について、五感を研ぎ澄ませ、じっくり意識を集中させてとらえることです。「味わう」のは、楽しい出来事を予感する事前準備から始めてもいいし、出来事の最中はもちろん、終わった後の余韻や、それらすべてを対象にしてもかまいません。
 
例えば、休日に焼きそばを作って食べるという何でもない日常を味わってみましょう。
 
買い物に行く途中の空の色、空気のにおい、すれ違う子供の声、いつの間にか暑くなった初夏の気温。スーパーのざわめき、肉トレーの重量感、レジを待つ間、頭の中での調理シミュレーション。台所でキャベツをきざむ、質感、音、包丁の切れ味の爽快感、肉を炒める匂い、じゅうじゅうという音、焦げつきかけたときの焦り。出来上がったやきそばの輝き、匂い、色のコントラスト、家族の反応、おいしいと言う声、満腹後の心地よい倦怠感。なんの変哲もない日常の出来事が、色とにおいと質感を伴って、記憶の中に焼きつくでしょう。
 
記憶の引き出しは、何度でも開けて取り出し味わうことができます。味わえば味わうほど、幸福なシーンのみが強調されて記憶にとどまるようになります。記憶の引き出しには良い出来事も悪い出来事もありますが、良い出来事を習慣的に味わうことにより幸福の引き出しが増え、幸福度が上がり、人生の満足度も高まります。?だと思ったら、ぜひ一度やってみてください。
 
どうせ一度しかない人生ならば、より良い人生を送った方がいいと思いませんか?
 

参考文献

『ポジティブ心理学入門 「よい生き方」を科学的に考える方法』春秋社

 

2014年6月