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【第22回】 資格取得をプロジェクトと考え、自分自身をマネジメントしてみましょう

 

みなさんは、自分自身はもちろん、部下や同僚の資格取得を支援する立場の方も多いと思います。私は、プロジェクトマネジメントの仕事をしながら、国家資格である「技術士」の試験に挑戦してきました。現在は、自身の合格経験を生かし、社外のボランティアグループの一員として、技術士を目指す技術者の支援を通じた社会貢献活動を行っています。今回は、講座時に受講生にお勧めしている「資格取得をプロジェクトと考え、自分自身をマネジメントする」方法について、紹介したいと思います。

 
SUKIYAKI塾東京 講師 望月直、PMP、技術士(情報工学部門、電気電子部門)

はじめに

技術士は、技術士法に基づき、国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者であり、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある国家資格とされています。国際的にもAPECエンジニア、EMF国際エンジニアとしての相互認証の仕組みがあります。試験は、一次試験、二次試験に分かれています。論文作成、口頭試問を主体とした二次試験の合格率は、16.4%(平成25年度)であり、受験者 23,123名に対し合格者が 3,801名にとどまり、難関の資格となっています。私は、このような資格に挑戦する受講生に対して、毎年、以下のステップで指導することを心掛けています。ただし、時間も限られますので、座学で Step2 まで講義し、Step3, 4, 5 は自分で考えていただくためのアドバイスをすることにしています。


Step 1.モチベーションを高める(なぜ資格を取得したいのか、取得した時のバラ色の未来は)
Step 2.試験で問われる範囲、求められる合格レベルを知る
Step 3.自分の現在の立ち位置を認識する(合格圏内、当落線上、力が不足している)
Step 4.このギャップを埋めるには何が必要か(ひとりひとり違う)
Step 5.具体的な勉強の計画、実行、チェック(ツール、WBS、スケジュール、マネジメント)
 

これは、長丁場の試験勉強にくじけない高いモチベーションを持ち、客観的に自分の実力を見極め、合格のためには何が必要か、スケジューリングと実行、チェック、これをご自身のプロジェクトとしてマネジメントしていただきたい、そんな思いからお勧めしている方法です。以下、私自身の体験も交えながら、ご紹介したいと思います。

Step 1. モチベーションを高める(なぜ資格を取得したいのか、取得した時のバラ色の未来は)

私は、このプロセスを大切にしています。プロジェクトでいうとキックオフミーティングになるでしょうか。
まず、受講生にお会いした時、なぜ、技術士になりたいのか?じっくりとお話を聞くことにしています。はじめは、表面的なことに終始していても、なぜ?なぜ?と繰り返して聞いているうちに、受講生の本来の姿や目的が明確化してきます。そこで、資格を取ることによって、受講生ひとりひとりにとって、どんなにすばらしい未来があるのかを共感するようにしています。このプロセスは、極めて重要だと思っています。長丁場の試験勉強、そして求められる高いレベルに途中でくじけてしまう方もいらっしゃいます。でも、最初に強い動機づけを行っておくと、途中でくじけない高い意識を保てることになると考えています。

Step 2. 試験で問われる範囲、求められる合格レベルを知る

次に、過去に出題された問題の傾向や範囲を確認しながら、技術士に求められる「専門知識」、「応用能力」、「課題解決能力」について、理解を深めていきます。そして、技術士が取り組むべき社会的な変化や技術に関する最新の状況を題材として、「課題解決」に関する論文作成の演習問題に取り組んでいただきます。

Step 3. 自分の現在の立ち位置を認識する(合格圏内、当落線上、力が不足している)

過去問の傾向や範囲の理解を深め、そして演習問題をやっていただくと、受講生自身でおおよそどのような位置づけにいるのかがわかるようになります。既に合格レベルに達している方、まだまだ勉強が必要な方など、自分の今の力を客観的に見つめることが必要です。ここで認識した合格レベルと自分の力のギャップをもとに、今後の勉強をどのようにやっていくべきか、アドバイスをするようにしています。時には、厳しい意見を差し上げることもありますが、ここである程度ショックを受けておくことが最終的に良い結果につながると考えています。

Step 4. このギャップを埋めるには何が必要か(ひとりひとり違う)

当然ながら、自分の知識・経験だけで、すべてをカバーできる方がいるわけはありません。そこで、自分の知識・経験の棚卸しを行い、何が得意で何が不足しているかを整理することをお勧めしています。この作業を、私は勝手に「自分のポートフォリオを作成する」なんて呼んでいます。

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Step 5. 具体的な勉強の計画、実行、チェック(ツール、WBS、スケジュール、マネジメント)

そして、自分の強みはさらに強化し、弱みの部分は重点的に知識を獲得するための勉強を具体的に計画します。これが、資格取得プロジェクトのWBS、スケジュール作成に該当すると思います。Step4、までをしっかりとやってきているからこそ、良いWBSが作成できると説明しています。また、受講生は、社会の第一線で忙しく働いている方たちです。まとまった勉強時間を確保することはできません。勉強時間の確保は、ひとりひとり方法が違って当たり前です。このため、私の場合ですが、「コマ切れ勉強法」と勝手に名づけていますが、通勤や出張などの移動中の短い時間を使って少しずつ勉強をすることを紹介しています。たとえ、5 ~10分の短い時間でも、その積み重ねは結構なものになります。大事なことは、WBSをスケジュールに展開し、勉強の計画を1日単位でミクロに立て、どんなに小さな進捗でも自分の満足感が得られるように管理していくこと、そして継続する気持ちを忘れないようにすることをお伝えしています。

<(紹介している勉強の例)課題解決能力を高めるための訓練方法>

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最後に

資格取得をプロジェクト的な観点からマネジメントするお話をしてきましたが、いかがでしたでしょうか?実際にやってみると、マネジメントするのは自分だけではなく、さまざまな関係者(妻、子供、仕事、地域行事、等)があり、勉強時間の確保に苦心することになると思います。ただ、例年、受講生のみなさんも、とても工夫して勉強時間を確保されており、感心することばかりです。また、毎年の合格の連絡をいただくのがこの上ない喜びとなっています。中には、今まで何回挑戦しても合格できなかったが、「塾に来て考え方や勉強方法を変えた途端に無事合格できた」という最高級の報告をくださる方もいました。私たちの活動は、「できる人が、できる時に、できることを」の精神で、志を同じくするメンバーで北海道から沖縄までの全国的なネットワークを築いており、各地で手作りの講座などのイベントを開催しています。PMI日本支部のみなさんで技術士資格をお持ちの方、ボランティアではありますが、ぜひ講師として仲間になりませんか?教えること=自分の勉強になり、自己研鑽の場になること間違いなしです。

 

2014年9月