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【第23回】 これからの女性の活躍に向けて

 

女性PMコミュニティー WomenOBF 副代表
高市 裕子

はじめに ~女性活用に対する意識の高まり~

「女性が輝く日本」 が政府の掲げる成長戦略の核とされていることも手伝ってか、最近はさまざまな媒体で女性活用の記事を目にすることが増えました。なぜ女性の活用が必要なのか、活躍する女性を増やすにはどうしたらいいか、現在の働き方の問題点は何か、などなど公のイベントから個人のブログに至るまで、さまざまな視点から意見交換がなされていることはみなさんお感じのことと思います。

しかしながら、そこで発言している女性は、ある程度経験やキャリアを積み、まさに「活躍中」の方が多いように感じます。もちろん、これまでのキャリアやご自身の苦労にも基づいている説得力に加え、彼女たちが発信することによる影響力の大きさは非常に心強く、こういった盛り上がりに多いに貢献していることでしょう。

では、この施策によって今後活躍していってほしいと期待されている世代の女性たちは、どう思っているのでしょうか。この点に関しては残念ながら生の声を耳にする機会が少ないと言わざるを得ません。社会における女性活用は、性別や年齢、役職、キャリア、既婚/未婚に関係なく全員が考えるべきテーマですが、これからキャリアを積んでいく女性が最大の当事者としてもっと積極的に議論に参加すべきと思います。

私は、2012年から PMI日本支部のWomenOBF に参加し、プロジェクト・マネジャーという役割に対する女性の従事状況や意識調査、海外事例収集などをしてきました。これらの調査や研究会メンバーとのディスカッションを通して、また、会社での自身の役割変更やライフイベントでの大きな変化もあり、ここ数年で自分のみならず、同世代、あるいはもっと若手の女性が働き、キャリアを積むことについて考えるよい機会となりました。

そこで、今回のリレー・エッセイでは、アラサー女性の一人として私の経験から思うところを少し書いてみようと思います。もちろん、職場や家庭環境、個人の性格によるところが大きいのであくまで一例ではありますが、同じような部下や後輩を持つ方や、同世代の方にとって何か考えたりコミュニケーションをとるきっかけになれば幸いです。

私が管理職になった経験から

「管理職候補として推薦しようと思うんだけど」。これは数年前、私が上司から言われた言葉です。私の会社では管理職になるのは40歳手前が普通、早くても35歳くらいでしたから、当時31歳でキャリアのことなどあまり考えず過ごしてきた自分にとっては冗談と受け取ってしまうほど現実味がありませんでした。が、冗談でないことも分かり、推薦の話を受けるかどうか一瞬迷ったものの、自分を推薦するにはそれなりの理由があるのだろうと思い、試験を受けて管理職になりました。

このように、いわゆる伝統的な日本企業で若い女性が管理職になることはまだ多くない(なってほしいと思っている上司の方はいらっしゃると思いますがなかなか実現しないケースもあるかと思います)と思いますが、みなさんの職場で同じことが起きたらどのような反応が考えられますか?あるいはご自身が私と同じ立場だったらどのように感じますか?

おそらく、頭に浮かんだのは不安や戸惑いなど比較的ネガティブなものが多いのではないでしょうか。確かに、私も辞令が近づくにつれて不安を感じました。例えば、何か一つでもミスすれば「だからダメなんだ」と思われないか、推薦した上司に対しても非難が及んだり、そもそもお客さまや他部門の方たちから「こいつに何ができるんだ」と思われ信用されないのではないか、という不安から自然に「40代の男性管理職と同じ成果を最低でも出さないといけない(自分のペースで仕事していたら期待に応えられないのでは)」「今後、若手や女性を積極的に管理職に登用することへのブレーキになってはいけない」というプレッシャーや責任を少なからず感じていました。

それまで進学にしろ就職にしろ、女性であっても選択肢は開けていましたし、理不尽な思いをしたことはありませんでしたが(私の世代ではほぼ当たり前と思います)、男性管理職が圧倒的に多い環境下では女性というだけである種の"異質感"が出ることは事実であり、性別だけに目を向けられて純粋に能力(良い面、悪い面どちらも含め)を評価してもらえるのか、また、個人の能力不足を女性全体の一般論として語られはしまいか、という不安は私に限らず(どんなに前向きで自信のある方でも)感じるのではないでしょうか。

実際は上のような経験をすることもなく、また、自分にできること以上の成果は出ませんし、最初から満点の人間などいるはずもなく、必要以上に気負って仕事するだけ無駄ということも分かりました。逆に新米管理職なんだから、分からないことは先輩に聞くなど自分ひとりの力だけでなく周囲の協力も借りようと割り切れるようにもなりました(今振り返るとなんであんなネガティブな気持ちになっていたんだろうと思います)。

ただし、このように不安や心配があったにも関わらず前に進めたことや、余計な心配から解放されたことの背景には、会社の制度や自分の能力・性格よりも職場の身近な人間関係に恵まれたことがとても大きかったと感じており、逆に言えば、いくら若い女性にやる気があってもそれを後押しするものとして気軽に頼れ、温かく見守ってくれる上司や先輩、同僚がいなければチャレンジすることを躊躇(ためら)うのは当然かもしれない、と思います。ロールモデルとなる女性管理職がまわりにいない若手女性は不安もさらに大きいことでしょう。

さらなる環境の変化に向けて

そんな私も出産を控えており現在産休中です。初めてのことで、妊娠が分かってからの約半年間は果たしてフルタイムでこれまでと同じように働けるのか不安もありましたが、職場や家族のサポートにより無事に産休に入ることができました。

わが子を産むというのは私しかできないこととはいえ、ここから育児休暇含めて約1年半を仕事から離れることに不安や抵抗がないわけではありません。1年半も休んで休職前と同じモチベーションで働けるのかということや1年半後の最新状況にきちんとキャッチアップできるだろうか、ということ以外、復帰後は育児と仕事をどう両立していこうかという不安ももちろんあります。

特に、仕事とは「決まった時間に会社へ行って所定時間働くこと」という感覚や長時間労働を前提とした風習が一般的な日本企業では、時短勤務者がその能力を最大限発揮するには限界があることも多く、パフォーマンス測定が難しい管理職においては評価・報酬の考え方もはっきりしていないのが現状です。

そんな環境でも、育児をしながら休職前と同じ役割・責任を果たすにはどうしたらいいか。これは私の問題だけではなく、企業側にとってワーキングマザーを管理職リソースとして有効活用するための課題でもあると考えます。

既存の就業スタイルにとらわれず、ワーキングマザーと企業、双方がWin-Winになるような働き方を休職期間中に考えて、復帰後にはできるだけ何も捨てない・諦めずに役割を果たしていけるような形で仕事と子育てを両立させたいというのが今の私の目標です。

おわりに

これから活躍する女性の多くは、会社でのキャリアと並行してさまざまなライフイベントによる変化を迎える世代です。今後、女性がどんどん活躍するために、不足している制度を整備するなど大がかりな施策をただ待つのではなく、職場内で今から個々人ができることとして、上司の立場にある特に男性の方は、ぜひ、部下や後輩の女性と意識的にコミュニケーションをとって頻繁に話を聞いてみてはいかがでしょうか。多数派である男性の視点では気付かない女性の不安を知ったり、それを解消するきっかけになるかもしれません。