PMBOK®ガイド 第5版紹介シリーズ 第2回 ISO 21500について
PMBOK®ガイド 第5版 紹介シリーズ
第2回 ISO 21500について
PMBOK® 委員会
山中 良文
(1) PMBOK®ガイド 以外のプロジェクトマネジメント標準
プロジェクトマネジメント標準(以下、諸標準と称す)は、PMBOK®ガイド 以外にも、各国の各種PM団体から多数発行されています。
たとえば、以下のようなものがあります。
● PRINCE2 TM:英国商務省発行(現在は民間との合弁会社)、政府調達に使用されています。
● APMBOK®ガイド :英国プロジェクトマネジメント協会(APM)発行で、内容は知識エリア中心です。
● ICB :IPMA発行、コンピテンシーをベースとした標準です。
(2) ISO 21500とは
経済のグローバル化に伴う国際プロジェクトの増加により、諸標準が存在することによる混乱を回避するため、プロジェクトマネジメントの国際規格(ISO21500)として策定され、2012年9月1日に正式にリリースされました。これには、契約上の係争増加も背景にあると考えられます。 策定にあたり、各国からPMBOK®ガイド を含む諸標準の有識者が参加しています。
ISO 21500は国際標準ですが、現時点ではISO 9001のような認証制度は無いため認証機関による審査はありません。あくまで、「プロジェクトマネジマントの概念およびプロセスに関する包括的な手引きを提供するもの」(ISO 21500 1 適用範囲)と位置づけされており、全36ページ程度のボリュームで構成されています。 内容は包括的な記述であるため、もう少し内容を掘り下げて学習したい場合は、上記(1)の諸標準も参照すると一層理解を深める事が可能となります。
特にプロセスと知識エリアに関しては、プロジェクトマネジメント協会(PMI®)から提供されたPMBOK®ガイド 第4版の情報を参照していますので、ISO 21500の記述内容を理解するためには PMBOK®ガイド を読むことをお勧めします。
またISO 21500にはプロジェクトの上位概念としてのプログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントについても記述されていますが、その話題については第6回で解説します。
【プロセス群】(PMBOK®ガイド、ISO 21500でもプロセス群と称します)
【知識エリア】(PMBOK®ガイド では知識エリア、ISO 21500ではサブジェクトグループと称します)
【PMBOK®ガイドでのプロセス群と知識エリアのイメージ】
プロジェクトマネジャーにはプロジェクトの進捗に従ったアクションが要求されますが、その際、知識エリアごとに分析し整理すると、網羅的で的確な状況把握と打つ手が判断できます。関係者へも論理的な説明が可能となります。 (右図の出典:PMアソシエイツ(株)の研修資料より) |
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(3) ISO 21500と PMBOK®ガイド 第5版
前項にて明らかなように、ISO 21500のプロセスとサブジェクトグループ(PMBOK®ガイド では知識エリア)が、PMBOK®ガイド のプロセスと知識エリアに類似しています。 【知識エリア】の表をご覧いただければおわかりのように、第4版でコミュニケーション・マネジメントの一部として扱われていたステークホルダー・マネジメントが、第5版では独立した知識エリアとして追加されています。
PMBOK®ガイド 第5版では、知識エリアとプロセスが増え、第4版(知識エリア:9、プロセス:42) ⇒ 第5版(知識エリア:10、プロセス:47)という構成に変更されています。
ステークホルダー・マネジメント知識エリアを独立して設定するのが世界の趨勢となっており、PMBOK®ガイド 第5版もISO 21500に準拠して、ステークホルダー・マネジメントを独立させました。
皆さんが所属する組織(企業、公共団体、非営利団体)では、通常、中期計画、および年度単位に目標を立てられていることでしょう。その目標が、定常業務の中で達成可能なものであれば現状の仕組みや組織(As is)で成果を出せば良いのですが、それでは目標達成が望めない場合、そのギャップを埋めるためのソリューションを創出し、あるべき姿(To Be)を実現する必要があります。
プロジェクトは、現状(As is) とあるべき姿(To be)のギャップを埋め、価値を実現するために遂行されます。結果として影響の大小はあれ、プロジェクトの遂行により定常業務に影響を及ぼします。特に、業務プロセスの変更を伴うプロジェクトでは、価値実現のためにキーとなるステークホルダーに影響を受け入れてもらうことが大切です。そのためには、個々のステークホルダーのニーズや期待を満足させることが重要です。
その重要性に鑑み、さらにコミュニケーション・マネジメント領域における情報管理の意義を考慮して、ステークホルダー・マネジメントを別の知識エリアとしました。
なお、ステークホルダー・マネジメントについては次回(第3回)に解説します。ご期待ください。
以上