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PMBOK®ガイド 第5版紹介シリーズ 第5回  アジャイル型ライフサイクル

PMBOK®ガイド  第5版 紹介シリーズ
第5回 アジャイル型ライフサイクル

PMBOK® 委員会
庄司 敏浩

(1) あなたはプロジェクトを計画どおりに進められますか?

 プロジェクトは計画を策定することが大切です。計画を立てて、計画どおりにプロジェクトを進めていきます。計画どおりに進んでいなければ、是正処置を取ります。プロジェクトをマネジメントし易くするように、プロジェクトのライフサイクルをフェーズに分けます。フェーズごとにそれぞれのフェーズが完了しており、次のフェーズに進むことができるのかを判断します。そして、フェーズごとにプロジェクトを進めて行きます。

 これは、プロジェクトマネジメントの基本ですが、みなさんはその通りにプロジェクトを進めることができていますか?
 例えばIT業界におけるソフトウェア開発プロジェクトでは、伝統的にウォーターフォール型でプロジェクトを進めていくのが主流です。ウォーターフォール型では、プロジェクトを要件定義、設計、製造、テストなどのフェーズに分け、後戻りしないようにフェーズごとに順番にプロジェクトを進めていきます。しかし、まったく後戻りなくプロジェクトが進められたことがどれだけあるでしょうか? ウォーターフォールの理念どおりに完全に進んだプロジェクトなどほとんどないのではないでしょうか?

 業務の進め方イメージ.jpg

(2) 計画が立てられないというプロジェクトもある

もちろん状況は、業種・業界やプロジェクトの種類によって異なるでしょう。しかし、IT業界ではプロジェクトの初めにスコープを決定し、期間や費用の見積りを行い、確度の高い計画を立案することが困難であるという課題に長らく直面してきました。

そもそも、プロジェクトの開始に先立ってスコープを固められない、だから期間や費用の見積りもできない、途中で仕様変更が発生することも避けられない、このような状況が多発しています。こういったタイプのプロジェクトでは、初めにしっかりとした計画を立ててプロジェクトを進めるようなスタイル(これを計画駆動型:Plan-drivenという)は適用できないという声があがっていました。

 ソフトウェア開発の世界では、長らくこの課題に対しての取り組みが行われてきており、ウォーターフォール型開発から繰り返し型(反復型;iterativeおよび漸進型;incremental)開発、そしてアジャイル型開発へと開発スタイルを発展させてきました。

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(3) PMBOK®ガイド  はアジャイル型開発に適用できない?

 PMBOK®ガイド はアジャイル型開発に適用できないという意見をしばしば耳にします。本当に適用できないのでしょうか。

 確かにPMBOK®ガイド はシステム開発プロジェクトにおけるウォーターフォール型開発のような計画駆動型のプロジェクトをイメージして書かれているように思われる箇所が見られます。しかし、PMBOK®ガイド は、自分たちのプロジェクトに合わせて利用していくテーラリングを行うことが前提で書かれています。PMBOK®ガイド は高度に汎用化されている分、分かりにくい箇所もありますが、テーラリングを行うという前提で読むと、PMBOK®ガイド に書かれていることはアジャイル型開発も含めた多様なプロジェクトに適用できるものだと分かります。

 このテーラリングという考え方はPMBOK®ガイド の根幹をなすものではありますが、第4版まではアジャイル型開発のようなプロジェクトに適用できるものであるという説明が若干不足していたきらいがあります。そのため、PMBOK®ガイド はアジャイル型開発に適用できないという誤解が生まれたのではないでしょうか。PMBOK®ガイド 第5版では、この点をライフサイクルの違いとして説明しています。

(4) PMBOK®ガイド 第5版で紹介されているライフサイクルのタイプ

PMBOK®ガイド 第5版ではライフサイクルのタイプとして以下の三つを紹介しています。

①予測型ライフサイクル(計画駆動型)

 プロジェクト・スコープおよびスコープの達成に必要な時間とコストを、可能な限りプロジェクト・ライフサイクルの初期に決定する。

②反復型ライフサイクル/漸進型ライフサイクル

 プロジェクト・チームがプロダクトについての理解を深められるよう、一連のサイクルを繰り返しながら進めて行く。

        ●  反復型:一連のサイクルを繰り返して、プロダクトを作成する。
        ●  漸進型:継続的にプロダクトの機能を追加していく。

③適応型ライフサイクル(変化駆動型/アジャイル手法)

 非常に短い期間(通常2~4週間)で反復を繰り返し、要求事項の変化に対応していく。一般に、変化の激しい環境へ対応する場合、要求事項とスコープを事前に定義することが難しい場合に選択される。

 PMBOK®ガイド は、いずれのライフサイクルのパターンにも適用できるガイドなのです。
 ビジネス上の舵取りを機動的に行っていかなければならない昨今、プロジェクトマネジメントも機動的(アジャイル)に行う必要性が高まっているのではないでしょうか。プロジェクトをアジャイルにマネジメントするために、PMBOK®ガイド を賢く利用していきましょう。

以上

 

(注)アジャイル(agile)とは、「俊敏な、機敏な」という意味ですが、ここでは「機動的」としています。

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