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『PMBOK®ガイド』 第6版紹介シリーズ 第1回 イントロダクション

『PMBOK®ガイド』 第6版 紹介シリーズ
第1回 イントロダクション

プロジェクトマネジメント研究会
加藤 裕哉

はじめに

 現在は技術の進歩とイノベーションの加速によって既存ビジネスモデルの崩壊・再構築のスピードが著しく速くなっています。また、SNS、スマートフォンの普及によりビジネスには個々の顧客に向き合った対応が必要です。
 
 これまでは、当初立てたプロジェクト計画に則りマネジメントを行い QCD を達成することがプロジェクトの成功のように思われてきました。しかし、今日では、プロジェクトの成果物がベネフィットをもたらすことがプロジェクトの成否の尺度となっています。
 
 このような、変化のスピードが速く競争がますます厳しくなっている環境にプロジェクト・マネジャーが対応していくためにはテクニカル・スキルだけでは不足であるとの考えから、PMI はPMIタレント・トライアングルTMを 2015年から提案してきました。変化に対応していくためには、今まで以上にリーダーシップ、戦略とビジネス・マネジメントのスキルも同様に必要です。この考えを取り入れた 『PMBOK®ガイド』の第6版が 2017年 9月に発行されました。

『PMBOK®ガイド』の役割と歴史

『PMBOK®ガイド』は、さまざまな産業におけるプロジェクト運営の共通点を見出し、優れた実務慣行を集めて体系化したガイドブックです。1996年に第1版が刊行されて以来4~5年ごとに改定を重ね第6版となりました。英語に加え11か国語に翻訳されて出版されています。
 
『PMBOK®ガイド』第6版は2つのパートから構成されています。パート1. は「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」となっており、広く使われて実証済みの伝統的な実務慣行、および革新的な実務慣行についての知識を含むガイドとなっています。パート2. は「プロジェクトマネジメント標準」として米国規格協会(ANSI)の認定を受けた標準が記載されています。
 
 PMI ではプロジェクト・マネジャーの実力を証明する資格として「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP®)」を認定しており、試験に合格することで取得できます。2019年7月時点で日本人はおよそ3万7千人、全世界では93万人以上の方が取得しています。

第6版の概略

 第6版では戦略・ビジネス知識に、これまで以上に重点を置いています。ビジネスの視点に立ってプロジェクトがもたらすベネフィットをマネジメントするための記述が強化されています。PMI タレント・トライアングルTM以外にもプロジェクト・マネジャーの競争力と影響力を引き上げるスキル・セットの記述も見ることが出来ます。
 
 もうひとつの特徴としてはプロジェクトマネジメントの中に適応型ライフサイクルの記述が強化されたことです。さらに、PMIはアジャイル・アライアンスと共同で『アジャイル実務ガイド』を刊行しました。アジャイル・アプローチは、ウォーターフォール型と呼ばれる従来のアプローチでは対処しきれない、変化や不確実性の高い領域におけるプロジェクトのひとつの手法として、2000年代の初めに開発され発展してきたものです。この手法は、当初IT産業におけるソフトウェア開発プロジェクトのために考え出されたのですが、今やあらゆる産業や領域で採用されています。第6版にはこの『アジャイル実務ガイド』がセットされています。『PMBOK®ガイド』第6版と『アジャイル実務ガイド』は、互いに補完するように作成され、組織へのアジャイル・プロジェクト導入の手引きともなっています。

次回以降、この『PMBOK®ガイド』第6版において注目すべきテーマにスポットを当て紹介を行っていきます。