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PMBOK®ガイド 第5版紹介シリーズ 第11回  PMBOK®ガイド は使えるのか?

PMBOK®ガイド  第5版 紹介シリーズ
第11回 PMBOK®ガイド は使えるのか?

PMBOK® 委員会
豊田 ちづる 

実務に役立たないのか?

 そう思っている人が多いのではないでしょうか。具体的に書かれていないし、今さら理論も必要ない。そんなもの読まなくたって目標達成の手段はわかっていると思っているかもしれません。あるいは、もうPMBOK® やPMP® は古いと思っている人もいるかもしれません。

 でも本当にそうでしょうか。実際PMBOK®ガイド 第5版は、2016年1月時点で10か国語に翻訳・出版され、世界中のプロジェクトマネジメントの実務家に読まれています。その内容は決して理論編ではなく、世界中のプロジェクトの経験情報を集めて体系化したもので、実務編ともいえます。「ほかの企業ではどうやっているのだろうか? うまくいった手法はなんだろうか?」という疑問に答える内容になっています。つまり実際にプロジェクトを運営するにあたってのガイドブックなのです。

 例えば、旅行のガイドブックで説明しましょう。みなさんが初めての土地へ旅行する時、きっと最初はガイドブックを手にして計画を立てることでしょう。あるいはツアーに参加するかもしれません。何度も行って慣れた土地だったらガイドなしでも楽しめるでしょうが、やっぱりガイドブックがあると安心していられるものです。同様に、プロジェクトでもPMBOK®ガイド どおりに進めるだけでなく、自分がどうしたいか、どう進めたいか、という心構えを持ち考えながら対応する事が大切なのです。その心に骨組みを作り、肉付けをすることが肝心です。そのための参考書がPMBOK®ガイド なのです。プロジェクトに関する参考書は世の中にたくさんありますので、どれを選んでもいいのですが、世界の標準といわれるPMBOK®ガイド が適切であることは、お分かりいただけると思います。

現実に使われているのか?

 企業でのプロジェクトマネジメント標準作成や、PMP® 資格試験で直接活用しているケース、それ以外でも、気が付かないうちにPMBOK®ガイド が使われているケースがあります。それは何でしょうか。まず挙げたいのが用語です。用語は専門的分野の職業においては不可欠な要素です。

 例えば、プロジェクトの失敗や成功の原因を挙げると「うちはコミュニケーションが悪かった」とか「コミュニケーションがよかったからうまくいった」という声を聞くことがあります。
 「コミュニケーションが悪かった」という理由の中には用語についての行き違いがあります。また、同じ言葉や単語を使っても「私はこういう意味で言ったのですが・・・」とか、「いや私はこういう意味にとりました」というように「言った、言わない」というような対立が発生してしまうケースが見られます。最近の訴訟によくみられるケースですが、同じ日本人同士でも起こるのですから、文化の違う外国人相手ですとなおさらコミュニケーションミスが発生する確率は高くなります。

 この問題を未然に防ぐためには、プロジェクトで使用する重要な用語の意味を統一しておけばいいわけです。
 PMBOK®ガイド では、プロジェクト関係の用語の統一とともに、考え方の統一も図っているので、世界中どこへ行ってもPMBOK®ガイド の用語によって意思疎通が容易になります。
 PMBOK®ガイド 活用の他の例として、ご存知ない方が多いかもしれませんがIPAのプロジェクト・マネジャー試験はPMBOK®ガイド がベースになっています。あるいは、会社のプロジェクトマネジメント標準を決めるときにPMBOK®ガイド を参考にしているのに、現場ではそれを認識していないこともあります。ある有名大手の企業では、プロマネ昇進試験の内容にPMBOK®ガイド を採用しています。

 どうしたら読んでもらえるのか!?

 PMBOK®ガイド の活用について、昨年のPMBOK® 委員会ではこんな意見が出ました。

●     具体的な事例を紹介する
●     もっと読みやすくする
●     アジャイルを取り入れる
●     読者層のレベルを明確に絞る
●     日本の商習慣を取り入れる
●     もっと薄く軽くする

 薄くはなっていませんが、第5版の内容はかなりよくなっています。是非一度手に取って読んでください。

 どのように読めばいいか?

  プロジェクトの進捗に10個の知識エリアを想定しながら読むと良いでしょう。

● 「自分だったらこうする」という骨格が必要
  ⇒PMBOK®ガイド の知識エリアで肉付けする

● 想定したシナリオをもとに計画を立てる
  ⇒PMBOK® ガイドの知識エリアで考える

● 局面ごとに発生する問題を想定して事前対策を行う
  ⇒リスク・マネジメントは立上げから始まる

● 管理項目はQCDだけではダメ
  ⇒PMBOK® ガイド の知識エリアに準じる

● 基本を身につけたら自分なりの進め方でOK
  ⇒守破離

全体像.JPG【プロジェクトマネジメントの全体像】

そんなこと言ったってプロジェクト・マネジャーは大変

 今までの連載でもPMBOK®ガイド を紹介してきましたが、プロジェクトマネジメントを行う上で、日本の商習慣や文化は欧米に比べると独特なものです。その状態を変えることは困難でしょう。

 やっぱり・・・

● 会社の標準に従わなくてはいけない・・

● 責任ばっかりで権限なんてない・・

● 変更が多くても納期は変わらない・・

● 上の人は、人さえ増やせばOKだと思っている・・

● 客は「良いものを早く、安く」しか言わない・・

● 相談相手が欲しい・・

 

 PMBOK®ガイド で、すべてを解決することはできません。一人で考え込まず、仲間や先輩と話すことも大切です。そのためには、プロジェクト活動の悩みについて、是非、PM経験のある先輩諸氏からPM理論について話しを聴いたり、ディスカッションしたりする場(コミュニティ)を設けることをお勧めします。
 
以上

当連載の他の記事へのリンク

  第1回 イントロダクション
  第2回 ISO21500について
  第3回 ステークホルダー・マネジメント
  第4回 ナレッジ・マネジメント
  第5回 アジャイル型ライフサイクル
  第6回 プログラム、ポートフォリオ
  第7回 スコープ・マネジメント
  第8回 タイム・マネジメント
  第9回 リスク・マネジメント
第10回 統合マネジメント
第11回 PMBOK®ガイド は使えるのか
第12回 PMBOK®ガイド 拡張版