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PMBOK®ガイド 第5版紹介シリーズ 第12回(続編最終回)  PMBOK®ガイド 拡張版

PMBOK®ガイド  第5版 紹介シリーズ
第12回 PMBOK®ガイド 拡張版

PMBOK® 委員会
鈴木 安而 

PMBOK®ガイド  拡張版の位置づけ

 すでにこの連載で述べてきたように、米国プロジェクトマネジメント協会(以下PMI®と称する)は、1969年に設立以来プロジェクトマネジメントに関する研究を重ねて、各種の標準書を発行してまいりました。その中で中核をなすのがPMBOK®ガイド  であり、1996年に第1版を発行して以来4年ごとに内容を改定し第5版まで発行されています。そして現在は2017年第2四半期に第6版を発行すべく改訂作業を行っています。

 PMBOK®ガイド は、その中に記述しているように、産業の種別にかかわらず使用されるべき共通の概念と用語を定義し、発行時点における世界中の優れたプロジェクト実務の集大成として作成され、第5版では10の知識エリアと47の標準プロセスを定義しています。その標準プロセスには主なインプットとアウトプットを定義していますが、ツールと技法は産業によって異なることを踏まえて、標準ではなくガイドとしているのです。このことは「PMBOK®ガイド」という名称の所以でもあります。

 20年間に渡って世界中のプロジェクト実務者への指針となってきたPMBOK®ガイド ですが、内容が汎化されているという特徴のために、産業によっては実務に合わないというような声が届けられるようになってきました。そこでPMIでは、特にその中からニーズがある分野を選び、「官公庁用拡張版」と「建設用拡張版」を発行しました。これらは主に欧米でのニーズに応えるものとして、対象分野でのプロジェクトマネジメントに役立てられ、例えば「建設用拡張版」は第3版にまで改訂がなされてきました。さらに2016年第2四半期には第4版が発表される予定になっています。

PMBOK®ガイド  ソフトウェア拡張版の誕生

 この拡張版では、プロジェクト・ライフサイクルを「高度予測型」から、「予測型」、「適応型」、そして「高度適応型」への連続体と定義しています。

 例えば従来のウォーターフォール型は高度予測型あるいは予測型であり、一般にいうところのアジャイル型は適応型や高度適応型といえます。当拡張版では、ソフトウェア開発プロジェクトをライフサイクルという概念で分類しているので、さまざまなアジャイル手法は「ツールと技法」に採り入れられています。「アジャイル」に慣れ親しんでいる読者にはわかりにくいかもしれませんが、PMBOK®ガイド の基本概念に整合させて表現しているので、PMBOK®ガイド に慣れ親しんでいる読者には理解しやすいものと思われます。

 要するに、従来の手法から最新の手法までをひとつの連続体としてPMBOK®ガイド の概念に従って説明しているのです。一般に使われている「アジャイル」という用語はさまざまな意味で使われているので、この拡張版では用語としては定義していません。

PMBOK®ガイド  ソフトウェア拡張版の概要

 本拡張版は、PMBOK®ガイド 第5版 の標準部分をそのままにして、ガイドの部分にソフトウェア・プロジェクトの特性に応じて、独自の用語やツールと技法を追加しています。
 まず、プロジェクト・ライフサイクルの連続体について説明しましょう。

① 高度予測型
  • 要求事項は立上げと計画時期に定義します。
  • Ÿリスクとコストは、開発に先立っての要求事項と制約条件に関する分析に基づく詳細計画によりコントロールします。
  • Ÿ主要ステークホルダーはスケジュールされたマイルストーンで関与します。
高度予測型は、プロジェクトの初期に定義したスコープに従って計画を立て、それを達成するようにプロジェクトを運営し、計画の変更は最小限に保たれます。この手法は、要求事項が明確で安定しており、変更の機会が非常に少ないような環境に適しています。計画駆動型の典型ともいえます。変更がある程度予想される場合には、予測型に相当するともいえます。
②  予測型と適応型の中間領域
  • 要求事項はソフトウェア開発期間において定期的間隔で詳細化します。
  • Ÿリスクとコストは、開発期間における要求事項と制約条件のタイムリーな定義に基づく段階的詳細化による計画でコントロールします。
  • Ÿ主要ステークホルダーは定められた間隔で関与します。
この領域では、例えば開発期間が6か月から1年程度の反復として進められます。その期間で作成された成果物をステークホルダーに提示して、次の開発期間における作業や成果物を定義します。この活動は最終成果物まで反復されますが、この反復期間が短くなると適応型といえます。そして要求事項を繰り返し収集し、変更を素早く採り入れるので、いわゆる「アジャイル」になっていきます。
③   高度適応型
  • 要求事項はソフトウェア開発期間において頻繁な間隔で詳細化します。
  • Ÿリスクとコストは、要求事項と制約条件の出現に応じてコントロールします。
  • Ÿ主要ステークホルダーは常に関与します。

高度適応型では、プロジェクトの初期にはハイレベルなスコープだけを定義し、段階的に、そして頻繁に、段階的詳細化を行っていきます。例えば、変更を前提とし開発のサイクルを1~4週間と短くして、変更要求に柔軟に対応していきます。この場合、その期間で作成可能なスコープを定義します。
 高度予測型や予測型では、最初にスコープを決めてそれを達成するようにスケジュールや予算を決めていきますが、それに対して適応型や高度適応型では、まず開発サイクルの期間を決めて(タイムボックスと呼ぶ)その中で作成可能な成果物を決めていきます。つまり、まず基本となる成果物を作ってステークホルダーに提示し、それを元に次々と機能やフィーチャーを追加していく手法です。

 この拡張版では、一般にいわれるアジャイル手法(XP、テスト駆動開発、フィーチャー駆動開発、リーン、カンバン、スクラム、など)について個別に説明しているわけではなく、それらの手法で使われている手法をPMBOKガイド のすべての知識エリアとプロセス群のITTO(インプット、ツールと技法、アウトプット)の中に採り入れて説明しています。
 これによって従来のプロジェクトマネジメントに取り入れやすくなっているともいえます。詳細については当拡張版を参照してください。

 

 以上、「PMBOKガイド 第5版 ソフトウェア拡張版」を中心に、「PMBOKガイド 拡張版」について紹介させていただきました。
 ソフトウェア開発に携わる方には必見の書籍です。ぜひご一読ください。。

 今回で第二弾(続編)のPMBOK® 第5版紹介シリーズは終了となります。

当連載の他の記事へのリンク

  第1回 イントロダクション
  第2回 ISO21500について
  第3回 ステークホルダー・マネジメント
  第4回 ナレッジ・マネジメント
  第5回 アジャイル型ライフサイクル
  第6回 プログラム、ポートフォリオ
  第7回 スコープ・マネジメント
  第8回 タイム・マネジメント
  第9回 リスク・マネジメント
第10回 統合マネジメント
第11回 PMBOK®ガイド は使えるのか
第12回 PMBOK®ガイド 拡張版