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PMBOK®ガイド 第5版紹介シリーズ 第6回  ポートフォリオマネジメント標準、プログラムマネジメント標準

PMBOK®ガイド  第5版 紹介シリーズ
第6回 ポートフォリオマネジメント標準、プログラムマネジメント標準

PMBOK® 委員会
田島 彰二

 PMBOK® ガイド 第5版 紹介シリーズとして、昨年12月から5回にわたり解説を連載してきましたが、今回はその最終回。
 ポートフォリオマネジメント標準、プログラムマネジメント標準について、わかり易くご説明します。

(1) プロローグ

 学生時代が過ぎ、企業の組織に所属し、プロジェクトに参加し始めた頃を思い出してみると、プロジェクト作業で苦労したことが走馬灯のように浮かんできます。そんな中、初めてPMBOK®ガイド の存在を知った時、“なんでもっと前にこれに出会わなかったのだろう”と悔やんだものでした。
 プロジェクトを担当しているプロジェクト・マネジャーは多かれ少なかれプロジェクトの特性に起因する課題や悩みを抱えていることでしょう。

 これまで5回にわたりPMBOK®ガイド 第5版におけるプロジェクトマネジメントの特徴について解説してきました。その中にはプロジェクト・マネジャーの悩みを解決する手法もありましたが、現実には全ての悩みをPMBOK®ガイド の範疇だけでカバーすることは不可能です。そこで今回は少し視野を広げて、PMBOK®ガイド だけではなく、PMIが提唱するポートフォリオマネジメント標準とプログラムマネジメント標準を参考にプロジェクト・マネジャーが抱える悩みについて考えてみました。

 はじめに、ポートフォリオマネジメントとプログラムマネジメントについて簡単に説明します。

(2) ポートフォリオマネジメント

 企業は継続的な成長を目指して日々活動します。例えば、収益を増大させる中長期計画を策定し達成しようとするとき、さまざまな部門から多くのアイデアやソリューションが提案されるでしょう。その中から投資効果を考慮して適切なものをいくつか選んで活動を開始します。

 その一つひとつがプロジェクトとなります。つまりプロジェクトは、組織の戦略目標達成の手段としての活動となります。組織では、その複数プロジェクトの個々の結果から組織目標全体の達成度合いを評価し必要な手を打っていきます。これがポートフォリオマネジメントです。日本ではこのためのプロセスを標準化している企業はまだまだ少ないようですが、これは企業経営そのものです。

(3) プログラムマネジメント

 ポートフォリオマネジメントによって選択された複数プロジェクトには、共有する目的があります。それらのプロジェクトの成果(ベネフィット)を統合して事業の目標達成に寄与させようとする場合、効率面や効果の発現度合いから見ても、個別のマネジメントだけではなく全体をまとめてマネジメントすることが必要となります。そのマネジメント手法をプログラムマネジメントと呼びます。

 プログラムマネジメントもポートフォリオマネジメントも、複数のプロジェクトのほかに、関連する定常業務も構成要素としてマネジメントします。

プログラムマネジメントの事例

 ここで、簡単なプログラムマネジメントの事例を紹介しましょう。

 20**年度の消費税対応のシステム開発を行う複数のプロジェクトがあるとします。
 それぞれ個別に開発を行った場合には大量の資源が必要になりますが、プログラムマネジメントの考え方を採用すると、かなりの工数を省くことが可能になります。

 【例:20**年度の消費税対応】

  ● 顧客A社対応プロジェクト:A社ITシステムに消費税対応の機能を追加
  ● 顧客B社対応プロジェクト:B社ITシステムに消費税対応の機能を追加
  ● 顧客C社対応プロジェクト:C社ITシステムに消費税対応の機能を追加

 この状況では、「類似システムの開発が並行して実施されているが、相互に連携する等のコントロールを行えばもっと効率化が図れるのではないか?」というような不満や要望がプロジェクト内で議論されることが考えられます。
 システム開発を行う複数プロジェクトの間に共通機能がある場合、これを切り出して開発するプロジェクトを別途発足すれば全体として開発効率が上り、コスト低減やスケジュール短縮を実現し、企業全体としての収益増加が可能と考えられます。

プログラムマネジメント導入の効果

 この場合の効果を具体的に考えてみましょう。

  • 法制度対応については、各社の要求のうち組織固有の処理を除けば共通機能であり、その部分を別途並行開発することで工期の短縮が可能になる。
  • 並行作業によって人的資源が一時的に増加するように見えるが、A、B、Cのプロジェクトから何人かの技術者を集めて共通機能を開発することによって、全体としての効率化とコスト削減が見込まれる。
  • 開発工期の短縮によって、企業としてのキャッシュ・フローや資金の回転率の向上が図れる。
  • 完成した共通機能を財産として手元に残せばこれが次期開発時には重要な資産となり、コスト削減とスケジュールの短縮に大いに貢献することが期待できる。

 このように、個別のプロジェクトでは解決できない問題に対処するには、複数プロジェクトをひとつのグループとして全体を見ながら調整しマネジメントする仕組みが必要となります。

 共通機能開発プロジェクトを仮にXとしましょう。A社、B社、C社、およびXプロジェクトの組み合わせとして、4つのプロジェクトの依存関係を分析し全体のスケジュールを決めていきます。その依存関係には、メンバー、仕様、試験、運用、などさまざまな要件が考慮されなければならず、全体を取り仕切る役割として一般にはPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)などが活用されます。この考え方がプログラムマネジメントになります。

(4) エピローグ

 以上、プログラムマネジメントの例をご紹介しましたが、このような例は、ポートフォリオマネジメントの例を含めて枚挙に暇がありません。
 知らず知らずのうちに行っていることでしょうが、PMI発行のプログラムマネジメント標準やポートフォリオマネジメント標準には体系的に記述されています。

 ぜひ参考になさって、みなさんの組織における標準化の一助としてください。

以上

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  第2回 ISO21500について
  第3回 ステークホルダー・マネジメント
  第4回 ナレッジ・マネジメント
  第5回 アジャイル型ライフサイクル
  第6回 プログラム、ポートフォリオ
  第7回 スコープ・マネジメント
  第8回 タイム・マネジメント
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