トピックス

【感染症対策下のPM】Vol.6 今だから振り返るべき過去の教訓

感染症対策下のPM

Vol.6. 今だから振り返るべき過去の教訓

PMI日本支部からの短期集中連載第6弾です。

眼前の問題に取り組みながらも将来に向けて記録を残し、教訓を伝えていく必要があります。また、今だからこそ過去の教訓を振り返り、先の読めない現状に対する道標とするべきでしょう。

2015年7月のPMI日本フォーラムは、徳山日出男氏(国土交通省技監/講演時)による基調講演 「東日本大震災の指揮と危機管理」で始まりました。2011年の東日本大震災において東北地方整備局長として現地で対応された生々しい実体験に基づく知見をご披露頂きました。

東北地方整備局の教訓は、「東日本大震災の実体験に基づく災害初動期指揮心得」(以下、本書)としてKindle版が無料公開されています。

首都直下や東海・東南海・南海地震など、今後の大規模災害への対応を想定した教訓集ですが、危機管理の教科書として一人でも多くのPMにご覧頂きたいと思い、この機会に改めてご紹介します。

東北地方整備局「東日本大震災の実体験に基づく災害初動期指揮心得」

本書の主張は冒頭に明記されています。

  • 備えていたことしか、役には立たなかった。
  • 備えていただけでは、十分ではなかった。

この2文は、COVID-19に対する政府、自治体、医療機関、福祉施設、教育機関などの対応のみならず、広く企業、団体、それに個人の対応においても、振り返るべき中核的観点を提示しています。例えば「在宅勤務」をこの観点で振り返ってみてはいかがでしょうか。

災害時に地方整備局は、知識・技術・経験のある職員、充実した機材装備と通信設備、事務所・出張所など多数の拠点を統合運用できる指揮命令系統を有しており、地元建設業界との協定により現地で必要な機材・人材を動員して、復旧・復興に当たります。徳山局長(当時)は「実力部隊」と表現されましたが、3,000人の東北地方整備職員、地元の建設会社、全国からの応援部隊を合わせて、万を超える人達が重機とともに物理的な力を発揮しました。

被災地に緊急車両が到達し、人命救助や救援に当たれるように最低限のアクセス路を確保する「啓開」が、地方整備局の初動期最大の責務でした。日頃から災害時を想定した装備や地元建設会社との協定を整備し、訓練を重ねていたからこそ、瓦礫や土砂を撤去し、自衛隊や救急医療チームが被災地に入れるようになりました。

本書の中では、震災直後、防災ヘリが仙台空港水没5分前に離陸し、日没までに津波などの被災状況を空撮できた経緯が紹介されています。これは前年チリ中部地震による津波対応の教訓を踏まえた対策が奏功した事例でした。この映像に基づいて被害は地震そのものよりも津波の方が大きいと判断し、「くしの歯作戦」という啓開の方針が立案されました。

現場責任者の臨機応変な対応も多々ありました。例えば、高速道路のガードレールを撤去して出入り自由にして輸送路を確保したとか、工事に必要な土砂や砕石を現地調達したり、周辺の民有地を利用したりと、平時ではあり得ないことも行ったそうです。

このような「掟破り」は、自らの責務を明確に認識し、現場の状況を的確に捉えた上での判断であればこそ、やらねばならぬこととして利害関係者からの理解が得られたものと推察されます。

本書の記述の中で最も重いのは以下の部分だと思います。

いざという時に、
 勉強不足による躊躇、
 決断力不足による不作為、
 連絡不足による混乱
を生じさせないように、
平時から
 災害時に自分の果たすべき役割について十分研究し、
 平常心で対応できるよう準備しておくこと
が大事である。

出典:東北地方整備局「東日本大震災の実体験に基づく災害初動期指揮心得」

本書では、要点、解説、事例、改善点という構造で各項目を整理しています。上記以外にも多様なノウハウが含まれていますので、一読をお勧めします。


今回のパンデミック対応を振り返り、想定内でうまくいったこと、うまくいかなかったこと、想定外で行き詰まったこと、臨機応変に対応できたことを整理し、まだしばらく続きそうな異常事態に臨み、そしてその先に活かすべき教訓を考えていきましょう。

PMI日本支部
 広報担当理事 端山・冨岡