予測しづらく、不確実性が高い課題に対処するときに有効になります。
現在の知識社会では、社会をより良い方向へ変化させる新しい発想が常に求められます。 しかし「社会を良くするアイデア」をどのように体系的に生み出すのか、その具体的な発想法は定着していません。
そして、私たちの社会は今までの技術主導や経済性主導から感性主導の社会に移行してきています。価値基準の重層化や人々の関心の多様化に伴い、社会のあらゆる側面で感性的な観点が重視されてきています。
現在の社会に見られる多くの課題は、今までのアプローチの解決が難しくなってきていると言われます。その理由の一つとして、感性主導の社会に移行してきていることが考えられます。
この現在の社会が抱える課題とその解決の難しさは、不確実性の観点から考えると理解しやすいと思います。不確実性が低ければ、今までの軌跡から今後を線形で予測でき、統計分析的な手法を用いて未来が予測しやすくなるはずです。実際に今までは、社会や産業における問題解決には、技術的もしくは経済的な観点に立ち、論理的、統計分析的な解決策が取られてきました。
しかしながら、不確実性が上がれば、選択肢が増加するため予測がしづらくなります。現在の社会や企業の取り扱う問題は、社会的かつ感性的になり、より予測しづらい不確実性が高い課題へとシフトしていると考えられます。その不確実性に対処するアプローチとして注目されるのが「デザイン思考」です。
今までの統計分析的な手法や論理的プロセスは,ある一定の不確実性レベルまでは非常に有効な手法となりますが、一定以上になった場合に効果を発揮するのがデザイン思考であるといえるのではないでしょうか。
不確実性が高い課題は、社会的かつ感性的だと前述しましたが、その社会文化的な影響は、デザイン思考にも色濃く出ています。
イリノイ工科大学デザイン大学院大学のヴィジェイ・クーマー教授のデザイン思考は、 1目的を見い出す、②コンテクストを知る、3人々を知る、4インサイトをまとめる、5コンセプトを探究する、6解決策を探る、7製品・サービスを実現するという7つのプロセスから構成されています。
その手順は、直線的に1から7へと進んでいくプロセスではなく、実際は非直線的に行われます。状況に応じてそれぞれのプロセスを往復し、さまざまな角度から繰り返し課題を再検討する中で、実際の行動へとつなげていきます。