2017年8月26日(土) にPMI日本支部 セミナールームで『ソーシャル・ポートフォリオ実践の『資源を最適活用して社会価値を最大化する』ワークショップを開催しました。 以下に、当日の様子をご報告します。
今回は「ソーシャルPM実践ワークショップ2017」の全6回シリーズのうち、第3回となる『ソーシャル・ポートフォリオ実践』です。
第2回の『ソーシャル・ベネフィットマネジメント実践』で、ステークホルダーにプロジェクトの「価値」を説明する術を学びました。ソーシャル活動の場では、多くの「やりたいこと」「やるべきこと」のアイデアが溢れています。ひとつひとつは課題解決策、未来に向けた価値を作り出すプロジェクトの候補です。しかし、すべてに取り組むリソース(人・物・金)を抱えているわけではありません。
目的を見据え、全体像を捉え、優先順位をつけ、「やること」と「やらないこと」の意思決定をしていく必要があります。
ソーシャルPM研究会では、ソーシャル・ポートフォリオマネジメントを、「ソーシャル課題に対する複数の解決策を評価、選定、優先順位付けして、限りある資源を有効に配分することによって創出する「投資価値を最適化」するマネジメント」と定義しています。
ソーシャル活動において複数の課題解決策に優先順位をつけ、「やること」、「やらないこと」として合意するのは、とても難しいことです。
今回のワークショップでは、個々の課題解決策を客観的に評価し、合意していく術をマネジメントの視点でお伝えしました。
午前中は、ソーシャルPM研究会の講師藤井より、ソーシャル活動の価値基準についての考え方とポートフォリオマネジメントについてレクチャーを行いました。テーマは「ソーシャルプロジェクトを評価していくための考え方」です。 |
ソーシャル課題の解決を目的とした活動に投資を行う際、その投資判断は「経済価値」だけでなく、「社会価値」を評価基準に加える必要があります。
「社会価値」は、大きく2つに分けて考えることができます。
①ソーシャルインパクト
活動や投資によって生み出される社会的変化、環境的変化
● 社会的変化:平等、生活、健康、栄養、貧困、安全、正義
● 環境的変化:環境保護、エネルギー利用、ゴミ、衛生環境、資源枯渇、気候変動
②ソーシャルキャピタル
社会的ネットワークとそこから生まれる信頼、規範といった、共通の目的に向けて効果的に協働活動へと導く社会組織の特徴
価値を創出する「ソーシャル・インパクト」、価値を蓄積する「ソーシャル・キャピタル」。この2つを定量的あるいは定性的に評価することで優先順位づけの有効な基準となります。
「社会価値」のみを対象とした活動は、インパクトを生み出すことが出来たとしても、永続性の面で問題がありやがて投資は停滞してしまいがちです。
マイケル・ポーターは、社会課題を解決することを通じて、自社にとっての大きな利益を獲得するCSV(Creating Shard Value:共有価値の戦略)を提唱しています。
「責任」から「戦略」へ、企業や個人が社会的投資を続けていくために、経済価値と社会価値をバランスさせる仕組みをデザインする必要があります。
また、午後のワークショップに入る準備として、ソーシャル・ポートフォリオマネジメントのプロセス(ソーシャル・ポートフォリオ定義、最適化、リスクマネジメント)とフレーム(バブルチャート、ベネフィットリスト、スコアリングモデルなど)を解説しました。
ソーシャルPM研究会の講師大小田のリードで、演習を行いました。 『企業のCSR活動』をテーマに、ソーシャル・ポートフォリオマネジメント手法をプロジェクトへ適用します。 |
演習1のソーシャル・ポートフォリオ定義では、ある企業の複数のCSR活動を、社会価値と経済価値を軸としたバブルチャートで分析し、CSVへ発展させるための課題にディスカッションしました。 |
演習2のソーシャル・ポートフォリオ最適化では、ベネフィットリストを用いて、複数の他団体のCSR活動とのコラボレーションを見据えた共通KPIを設定し、既存の自社CSR活動の見直しとして継続する活動とやめる活動の候補の選定を行いました。 |
演習3のソーシャル・リスクマネジメントでは、見直し後のCSR活動候補のリスク分析を行いました。 |
これらの演習を通じて、複数の課題解決策に優先順位をつけ、「やること」「やらないこと」を合意するには、こうした客観的な評価プロセスを用いることが有効であることを体感していただきました。
以下、ワークショップへの参加者からいただいた声の一例をご紹介します。
実施報告 次回は、ソーシャルPM実践ワークショップの6回シリーズの4回目 『ソーシャル・ステークホルダー実践』 (10月14日開催予定)となります。
「ソーシャル課題を解決するためにさまざまなステークホルダーを引きつけ、巻き込んでいき、ステークホルダーのコミットメントを得て、パートナーシップの熟成、維持を体得する」について学んでいく予定です。
企業のCSR担当者、企業との協働をめざすNPO団体の方は、ぜひご参加ください。
添付ファイル:重みづけスコアリングシート