ソーシャル・プロジェクトマネジメント研究会 大小田 恵子
2017年4月15日(土) にPMI日本支部 セミナールームで『ソーシャル・ベネフィットマネジメント実践のワークショップを開催しました。
副題は「ソーシャル課題解決の目標を設定し、実現・達成に向けたマネジメント』。
以下、当日の様子をご報告します。
今回は「ソーシャルPM実践ワークショップ2017」の全6回シリーズのうち、第2回となる『ソーシャル・ベネフィットマネジメント実践』です(2月に第1回『ソーシャル・デザイン思考実践』を開催済)。
ソーシャルPM研究会では、ソーシャル・ベネフィットマネジメントを、『ソーシャル課題の本質を把握し、それを解決するための目標を設定した上での実現・達成に向けたマネジメントである』と定義しています。
本ワークショップを受講いただいた方には以下の3点を持ち帰っていただくことを目標とし設定しました。
① ソーシャル課題の解決のために「ソーシャル・ベネフィット」を特定し共有することの重要性を説明できるようになる。
② ソーシャル・ベネフィットマネジメントのフレームワーク、手法、プロセスを体得する。
③ ソーシャル・ベネフィットマネジメント手法を実プロジェクトへ適用することを検討する。
ソーシャルPM研究会の講師藤井から、「ベネフィットとは何か」を説明しました。 ポイントは、「ベネフィット(便益)は『プロジェクトの成功の結果としてプロジェクト・スポンサーや受益者にもたらされる価値』であり、アウトカム(成果・効果)は『活動のアウトプットの影響をどのように受けるかを状態で表すもの』である、つまり視点の違いであるということでした。
続いて第1回『ソーシャル・デザイン思考実践』と今回の『ソーシャル・ベネフィットマネジメント実践』の関連を説明しました。 ポイントは、「ソーシャル・デザイン思考で提示されたコンセプト提案をインプットとして、ベネフィットが連鎖するロジックモデルを考え行動し、現実のインパクトにつなげるようマネジメントする」ということでした。また、今回初めて参加される受講者のため、「ソーシャル・デザイン思考」の概要も説明しました。
続いて、ソーシャル・ベネフィットマネジメント、ロジックモデル、ベネフィットリストについて説明しました。また、関連する手法としてBRM(ベネフィットリアライゼーションマネジメント)とその発展形である「SBRM」も紹介しました。
ここまでのポイントは、「社会的な課題の解決においては収益を追求するのみならず、それをコミュニティや活動に再投資することでベネフィットの連鎖を促し、それを計測することが重要であり、国際的にも社会的インパクト評価の研究が進んでいる」ということでした。
また、午後のワークショップに入る準備として、ロジックモデルとベネフィットリストという手法の紹介があり、その後4つのチームに分かれ、手法の有効性を実感するための演習を行いました。
この演習は、与えられたコンセプトとアイデアをもとに、ロジックモデルとベネフィットリストの穴を埋めるというものでした。具体的な流れは、次のとおりです。
① 「放課後NPO アフタースクール」のロジックモデルの穴あき部分を埋める
② 完成したロジックモデルについてディスカッションする
この演習により、手法を理解し、ベネフィットの連鎖とその先にあるビジョンを意識することの重要さを体感していただきました。
午前中は早いペースで講義が続き、受講者の皆様がやや混乱した様子も見受けられましたが、付箋に書いた質問を昼休みに受け付け、昼食後に回答するといった工夫をしました。
ソーシャルPM研究会の講師佐分利のリードで、演習を行いました。
『デパートを利用した地域活性化』をテーマに、ソーシャル・ベネフィットマネジメント手法の実プロジェクトへの適用を検討しました。
各チーム内でニックネームをつけあい、まず演習Aとして「立上げ時」のロジックモデルとベネフィットリストを作成しました。
ロジックモデルは、「活動」と「サービス」の区別が難しく、最初は各グループとも混乱がありましたが、最終ベネフィットにフォーカスして考えることで、流れが作れるようになっていました。
ベネフィットリストは、中期・長期になるほどはかりにくいものが多いのですが、参考資料として配布された「社会的インパクト評価ツールセット」がヒントになり、アンケートの質問まであげることができ、実際に評価をするイメージをもっていただけたようです。
次に、演習Bとして、「立上げから1年後」の評価を行い、評価結果とガーデンズの状況や期待の変化に基づいて、ロジックモデルとベネフィットリストの見直しを行いました。
どのグループも、設定した目標はすべて達成していましたが、それだけで終わらせない工夫がありました。
「運営委員会」からのコメントで「個人ボランティア」という提言があり、最初のロジックモデルとベネフィットリストは地域内、特にガーデンズとそこで活動するサークルのことしか見えていなかったことに気づき、「地域の活性化」のために必要な「人の流入と「個人ボランティア」について検討する等、実際にも起こりそうな状況を想定した演習に取り組んでいただけたと思います。
ロジックモデルが変わったので、ベネフィットリストも見直し、その過程で、設定した目標は達成した後も継続的に計測していくと、活動のモチベーションも上がるし、スポンサーへの説明も説得力が増すことを実感していただきました。
また、この見直しサイクルを短期間で回すことで、活動の加速化・アジャイル化が促進されるのではないかという気づきもありました。
演習の発表(1) | 演習の発表(2) |
こういった点は、企業の仕事でも同じ効果が期待できるので、PMIが開発したBRM(ベネフィット・リアライゼーション・マネジメント)もいずれご紹介できればと思います。
以下、ワークショップへの参加者からいただいた声の一例をご紹介します。
次回は、ソーシャルPM実践ワークショップの6回シリーズの3回目 『ソーシャル・ポートフォリオマネジメント実践』 (8月下旬開催予定)となります。
「CSV経営」とからめて、社会価値を最大化するための継続的なマネジメントについて学ぶ予定です。
企業のCSR担当者の方や企業との協働をめざすNPO団体の方は、ぜひご参加ください。
以上