FAQ 1-1

番号:1-1
分類:デザイン思考

デザイン思考って、どのようなものですか?

回答

現場の状況や人々の行動/思考を観察/体験して問題の本質を洞察し、課題を再定義して仮説を作り、プロトタイピングによる試行錯誤を繰り返して解決に導く「仮説検証型アプローチ」です。

解説

「デザイン思考」というキーワードでウェブサイトを検索しても適切な説明が見つかりませんので、ここで解説を試みます。


改善や改革を考えるとき、問題を定義して、その解決策を作ります。その問題解決アプローチには、大きく分けてトップダウンのアプローチとボトムアップのアプローチがあります。トップダウン・アプローチは、まず理論的にあるべき姿を描いて、現実の制約を考慮しながら実現する方法を考えていきます。逆にボトムアップ・アプローチでは、現状を調査して問題点を見つけ出し、それを除く方法を考えます。どちらの場合も、事前に問題が認識できて、解決策(複数の代替案がある場合もあります)が想定できることが前提です。


ソーシャルなテーマを考えるとき、トップダウンで進めようとしてもステークホルダーが多くて期待するものが様々であり、制約条件もまちまちであったりして解決案の合意を得るのが難しいことがあります。ボトムアップで進めようとしても、何が問題か人によって捉え方が違ったり、問題が複雑でいろいろな要因が絡み合っていたりするとやはり解決策をまとめるのが困難です。場合によっては当事者自身が本当の問題に気付いていないこともあります。このような状況で強行しても抵抗勢力に阻まれたり、総論賛成だが各論反対にあったりで実行段階で頓挫することもあります。


そこで、まず出発点で「現場の状況」や「人々の行動/思考」を観察/体験して「問題の本質を洞察」するというアプローチが重要になります。ここで特徴的なのは、現場に入って人々と一緒に活動しながら状況を把握し、表に現れている現象の裏にある本質的な問題を洞察する(インサイトと言います)ことです。現場の実態をよく観察して、その状況を共感する、人々の話を傾聴しながら、その人の想いに感情移入する、ということが求められます。そうすると、問題の捉え方について人々の同意を得られるようになるでしょう。


次に行うのは、「課題を再定義」して「仮説」を作り、「プロトタイピングによる試行錯誤」を繰り返して解決に導きます。ここでは仮説を立てて、それを形にするプロトタイプを作り、それを試しながら評価して改良を加えていきます。問題の捉え方が同意されても、それではどうするという段階では立場によっていろいろな要求が出て解決策がまとまりません。そこで、まだ最終案ではないですが、できるだけ最大公約数の対応策を作って試します。賢いアイデアを積み重ねていって、できるだけ包括的な施策になるように試作品を工夫するところが大きな山場です。それをテストして、さらに良いアイデアを見つけ、再度試作品を作ってテストするという試行錯誤を繰り返していくと、人々の意見もだんだんに集約されていくでしょう。


このような問題解決の考え方を「デザイン思考」と呼びます。問題のインサイトをつかみとるところと、解決策の効果的なアイデアを積み重ねるところが成否のカギを握っているところで、関連する領域の専門家(SME:Subject Matter Expert)が活躍するところです。仮説に基づくプロトタイプを評価して結論に到達するという進め方なので、トップダウンでもボトムアップでもなく、横から入っていくアプローチで「仮説検証型アプローチ」と言われます。